進化系文具、小粋な仕事ぶり 機能性+デザイン重視
技術の結晶「便利」は当然
今なお、進化を続ける日本の文具。使い手のわずかな不満やストレスをも取り除く商品には、日本のものづくりの高い技術が詰まっている。
近年、特に注目を集めるのがシャープペンシル。芯が折れないだけでなく、さらなる機能を各社が競っている。シャーペンというと学生が使うイメージが強いが、書いて消せる特性は思考を整理したり、企画をまとめたりとビジネスでも使いやすい。上位は1位、2位ともにシャーペンだった。
「今の文具は完成度が高く、便利なのは当然。トレンドは『便利』から『格好良い』に移っている」とライフスタイルディレクターの納富廉邦さんは話す。もはや機能が優れているのは当たり前。机の上に出しっぱなしにしてもサマになるデザインや、使う楽しさを備えた文具が数多く出ている。
新年度に入り、新たな気持ちで仕事や勉強に向かいたい。良い文具はやる気も引き出してくれる。
芯出し自動 ノック一度で最後まで
0.2ミリと0.3ミリの極細芯でも折れずに書けるシャープペンシル。「自動芯出し機構」を備え、一度ノックすれば1本の芯がなくなるまで書き続けられる画期的な商品だ。2月の発売後、品薄の状態が続いている。「最後まで止まらず書けるので、集中が途切れることなく筆記に意識を向け続けられる」(きだてたくさん)、「日本の文房具製造技術の高さを感じることができる」(清水茂樹さん)と圧倒的な支持を集めた。
軸には樹脂と金属を混ぜ合わせた素材を使う。重心を低めにしたことで「持ちやすく、書きやすい」(古屋文久さん)と握り心地にもこだわる。黒を基調にしたデザインは高級感があり「シャーペンは学生がターゲットになりがちだが、ビジネスシーンでの使用にマッチする。パッケージがすてきなのでギフトにもいい」(矢口玲奈さん)。
(1)希望小売価格 3240円(2)色やサイズ 芯径0.2ミリ、0.3ミリ。黒のみ(3)問い合わせ先電話番号 0120・12・8133
ひっくり返して消しゴムポン!
どんなに力を入れて書いても芯が折れないシャープペンシル、「デルガード」シリーズの最新商品。ひっくり返すだけで消しゴムが出てくる機能が加わった。消しゴムのキャップを外して消す手間が省け「書く、消すという一連の所作がスムーズになった」(北沢孝之さん)。「外出先や片手がふさがっている際の筆記に重宝する」(オダギリ展子さん)。垂直に強い筆圧が加わると、軸に内蔵したスプリングが芯を上方向に逃し折れを防ぐ。斜めに書くときは先端の金属部品が自動で出て芯を包み、ガードする仕組み。
(1)756円(2)0.5ミリ。スペア消しゴム付き。ブラック、ブルー、シルバーなど6色(3)0120・55・5335
たるまない絡まない 貼りやすさ追求
使いやすさにこだわったテープのり。ギアの構造を工夫し、従来品の弱点だったテープのたるみや絡まりを防ぐ。「貼りやすさやきれいさを追求している」(江守一王さん)。紙の端からはみ出さずに塗れるようガイドがつき、「適当に引いてもきちんと貼れる」(納富廉邦さん)。テープ幅は8.4ミリ、長さは22メートル。本体色が赤の「強力」、青の「しっかり」、緑の「キレイにはがせる」の3タイプがある。
(1)本体432円、詰め替えテープ324円(2)3色(3)0120・000・007
本やノートのお供 おしゃれに持ち歩き
ステンレス製のクリップに、細いポリプロピレンの付箋が2色つく。クリップなので必要に応じて手帳や本、ノートに付け替えられる。「スリムなので本やノートに挟んでも邪魔にならない。本を読みながらマークもできる」(土橋正さん)。使い終わっても別売りの「ココフセン」を貼れる。クリップを使うことで「ありそうでなかった便利さを実現。デザイン的にも優れていて汎用性も高い」(納富さん)
(1)453円(2)イエロー、ライトブルーなど4色(3)0120・62・1580
長さ自在、ラベルにもインデックスにも
テープカッター付きで、使いたい分だけカットして使えるロール付箋。「これ1つあればサイズ違いの付箋は不要かもしれない」(江守さん)。紙の裏全面にのりがついているので、きれいに貼れてはがれにくい。「アイデア次第でいろいろな使い方ができる。収納ボックスのラベルになるし、折って貼りあわせるとインデックスにもなる」(矢口さん)。幅15ミリとコンパクトで携帯にも便利だ。
(1)345円(2)レモン、オレンジなど蛍光カラー4色(3)0120・36・6203
サクッと穴開け なんとも快感
テコを改良し、軽い力で穴を開けられる穴開けパンチ。「アルミ製で軽い」(清野実生さん)、「天板を押してパンチするアクションが何とも快感」(高木芳紀さん)。すっきりした形も高い評価を得た。「パソコンやタブレットが並ぶ現代的なオフィスにも調和するデザイン」(清水さん)。穴開け枚数が10、20、30枚に対応した商品がある。
(1)オープン(実勢価格は20枚開けで2700円)(2)シルバー、ブラック、レッドなど(3)03・3695・5379
静電気でペタリ スリムにまとめる
表面に微弱な静電気を起こし、紙類を吸着させる卓上ボード。机の上で散らばりがちなレシートや名刺、メモなどを貼っておける。「マグネットや押しピンを使わずそのまま貼れるのが良い」(北沢さん)。サイズは幅10センチ、高さ30センチ、奥行き2.2センチ。「スリムで面積を取らないのもポイント」(きだてさん)。単3形アルカリ乾電池4本(別売り)で約9カ月間作動する。幅が2倍のタイプや、壁掛け用の大きなサイズもある。
(1)3780円(3)0570・06・4759
スーツのポケットに 無駄ない美
薄くて軽く、かさばらないよう工夫したシステム手帳。革を挟み込む金具を独自に開発した。ナローサイズは幅10センチ、高さ18センチ、厚さ1.5センチと長財布ほどの大きさで、スーツのポケットにも入る。重量はおよそ85グラム。「システム手帳のこれまでのイメージを覆す。余計なものをそぎ落とした美がある」(土橋さん)
(1)ナローサイズ6480円、バイブルサイズ7020円(リフィルは別)(2)スムース革で黒、茶、赤、オレンジの4色(3)03・5789・8058(デザインフィル)
不思議な変色 黒へじわり
時間とともに色が変化する万年筆用のインク。書き始めは赤や緑で、鉄分を含むため次第に酸化し、黒っぽく変わっていく。最近のインクは変色しないが、昔ながらの色変化が楽しめる上に色の種類も豊富。「万年筆ファンをうならせるすごいインク」(高木さん)。「経年で耐水性と長期保存性がアップするのも大きな魅力」(オダギリさん)だ。
(1)2160円(2)60cc入り。ラベンダーブラック、セピアブラック、シトラスブラックなど6色(3)0120・875・760
ハンドル回すだけ 子どもも安心
従来の小型鉛筆削りと違い、鉛筆ではなくハンドルの方を回して鉛筆を削る。卓上のハンドル式鉛筆削りを操作する感覚に近い。軽い力で削ることができ、直接刃に触れないので子どもも安心して使える。「子どもを持つ親には一緒に楽しめてうれしい一品」(古屋さん)。たまった削りくずは蓋を外して捨てるだけ。小さいのでペンケースに入れて持ち運びも楽だ。
(1)オープン(実勢価格は432円)(2)オレンジ、ライトブルー、グレーの3色(3)03・3695・5379
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。カッコ内はメーカー名。(1)希望小売価格(税込み)(2)色やサイズなど(3)問い合わせ先電話番号。写真は矢後衛撮影。
調査の方法 複数の専門家の推薦を基に、従来品より進化した機能を持つ文具を24商品選出。専門家11人に「驚きの新機能がある」「使ってみたいと思わせる」といった基準からお薦めを1~10位まで選んでもらい、集計した。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
江守一王(東急ハンズMD企画部バイヤー)▽オダギリ展子(事務効率化コンサルタント)▽北沢孝之(「Bun2」編集長)▽きだてたく(ライター)▽清水茂樹(「趣味の文具箱」編集長)▽清野実生(ロフト商品部文具雑貨部チーフバイヤー)▽高木芳紀(文具祭り・文具朝活会主宰者)▽土橋正(ステーショナリーディレクター)▽納富廉邦(ライフスタイルディレクター)▽古屋文久(丸善丸の内本店文具グループ売場長)▽矢口玲奈(伊東屋商品戦略部バイヤー)
[NIKKEIプラス1 2017年4月8日付]
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