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ニッキィの大疑問

「安倍1強」まだ続く? 3選で悲願の改憲めざす

2017/4/3付 日本経済新聞 夕刊

安倍内閣は最長9年間の超長期政権になる可能性が出てきた

 政治の世界は安倍晋三首相の「1強体制」といわれているわね。さらに長期政権になる可能性もあるらしいけど、最近話題の「森友学園問題」なんかは逆風にならないのかな。

 「安倍1強体制」の行方について、得田紀子さん(45)と菊池名津さん(37)が坂本英二編集委員の話を聞いた。

■安倍首相が最長9年間も首相を務める可能性が出てきたそうですね。

 「安倍首相は自民党総裁として現在2期目で、2018年9月末までが任期です。総裁任期は最長で連続2期6年までの決まりでしたが、3月5日の党大会で党則を改正し、3期9年まで可能になりました。来年の総裁選で安倍首相が3選されれば、最長9年間の超長期政権になる可能性があります」

 「すでに安倍内閣は第1次内閣からの通算で在職が1900日を超え、憲政史上6番目の長期政権です。今年5月下旬には小泉内閣を抜いて5番目に浮上します。仮に安倍首相が2021年9月末までの総裁任期を全うすると、戦前の桂太郎内閣の2886日間を抜き、3567日も続く歴代1位に躍り出ます」

■なぜ自民党は党則を改正したのですか。

 「同じ政権があまり長く続くと弊害が大きいという意見は自民党内にもあります。しかし安倍内閣は5年目に入っても支持率が6割前後と高く、自民党支持率を常に上回る状態が続いています」

 「自民党の政治家には『支持率が高い首相の下で次の選挙を戦ったほうが自分が当選する可能性が高くなる』という意識があります。安倍首相に交代を迫るムードにはなりにくく、任期延長の党則改正はほとんど異論が出ないまま決まりました」

 「安倍首相は憲法改正が悲願です。いきなり平和主義を定めた9条を改正するのは難しくても、大規模災害時に国会議員の任期を延長する『緊急事態条項』などをめぐる検討作業は進むかもしれません。在任中の改憲をなし遂げるには、来年9月以降も首相でいるのが前提です」

■安倍首相にライバルはいないのですか。

 「安倍首相の次としては、石破茂元自民党幹事長や岸田文雄外相らの名前があがっています。とはいえ今のままなら安倍首相に勝つのはそう簡単ではないでしょう。政権交代を目指す民進党の蓮舫代表も本来ならライバルのはずですが、民進党は前身の民主党時代から変わらず10%前後の低支持率のままです」

 「衆院選が中選挙区制だった1990年代半ばまでは、1つの選挙区に複数の自民党候補が出馬していました。各派閥の後押しで当選した議員は派に忠誠を誓い、非主流派は次の首相候補を擁立しようと虎視眈々(こしたんたん)と機会をうかがっていました」

 「ところが今の小選挙区制では選挙区に各党1人の候補しかいません。党執行部が公認権を独占し、活動資金も政党交付金を各候補に分配する仕組みです。派閥の力は弱まり、執行部に反旗を翻しにくくなって『1強体制』につながりやすいのです」

■「森友学園問題」は安倍首相の逆風になりませんか。

 「学校法人『森友学園』への国有地払い下げや小学校認可への政治の関与が疑われています。学園側は安倍首相夫妻に応援してもらったと主張し、首相や昭恵夫人は全面否定しています。何が真実かは分かりませんが、政権運営に一定のダメージを与えているのは事実です」

 「野党はこの問題に加えて、稲田朋美防衛相や金田勝年法相の閣僚としての資質に焦点を当てて辞任を迫っています。安倍内閣の支持率は堅調とはいえ、長期政権に伴う『おごり』や『ゆるみ』への批判がさらに増せば、支持率が大幅に下がる可能性も否定できません」

 「安倍1強体制を左右する最大の要素は、株価や為替相場を含めた日本経済の動向である、という基本構図に変化はありません。しかし思わぬスキャンダルで逆風が強まるようだと自民党内のムードが一変して、ポスト安倍に向けた動きが出てくるかもしれません」

■ちょっとウンチク
政権の寿命、経済が左右
 第2次安倍内閣が2012年末に発足した時、こんなに順調に5年目を迎えると予想した政治家は自民党内にも少なかった。06年から続いた短命6政権の負の連鎖を断ち切ったのは最大の功績と言っていい。内閣支持率は6割前後となお高く、それを支えているのは「経済が比較的堅調」「他に選択肢がない」という有権者の意識ではないか。
 だが政権が求心力を失うのは一瞬である。橋本龍太郎首相は1998年夏の参院選での自民党大敗によって予想外の退陣を余儀なくされた。景気の変調と減税などをめぐる政策のぶれが致命傷となった。安倍内閣は成長力を底上げしてデフレ脱却を達成できるのか。長期政権の行方を決める最大の要素はやはり経済だろう。
(編集委員 坂本英二)

■今回のニッキィ
得田 紀子さん IT(情報技術)関連企業勤務。昨年から歌舞伎を見るようになった。「昨年春に襲名披露をされた五代目中村雀右衛門さんの女形芸の魅力にハマっています」
菊池 名津さん 専門商社勤務。昨年から国際観光ボランティア講座に通い、4月から実際に外国人観光客の案内を始める。「シェアサイクルを使った観光などを企画しています」

[日本経済新聞夕刊2017年4月3日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は4月17日の予定です。

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