「ゆるほぐし」体操 バランス整え腰痛も軽くする
体の動きには人それぞれ癖があり、よく使う筋肉と使わないものがあり、知らず知らず偏りが出る。放置すれば血行不良による不調や腰痛、ひざ痛などを招く。「ゆるほぐし」体操で筋肉バランスをととのえよう。
いつも同じ方の肩でカバンを持つ、座り作業ばかりという人は要注意。腰椎が前後や左右へたわみ始め、骨盤の背中側の真ん中にある仙腸関節がずれるなど骨格のゆがみへと発展すれば、腰痛や膝痛、血行不良による冷えや不調につながりかねない。
今回は筋肉バランスを確認する方法とメンテナンス法「ゆるほぐし」を紹介したい。
まずは「体は応える」ことを体感しよう。直立の状態から上体を前に倒してみる。「手先はどこまで下ろせるか」「どの程度のこわばり具合か」をみてほしい。
次に、腰を下ろして足裏をさする。拳を握って足裏をつま先から踵(かかと)にかけて30回程度、左右同じようにさすってみる。その後、もう一度直立から上体を前に倒すと、先ほどより前屈しやすくなるなど、変化を体感できただろうか。簡単なことで「体は応える」のだ。
その上で「ゆるほぐし」体操を実践してほしい。1つ目は「お尻上げチェック」。片方ずつ、尻を浮かしてみる。体を横方向に動かす時に使う脊柱起立筋や腹斜筋、大腰筋など体の奥の「インナーマッスル」の左右差が分かる。
左右で「やりやすさ」に違いがないだろうか。「やりやすい」方があれば、そちら側だけ5秒間尻を持ち上げ、ストンと下ろす。3回程度繰り返した後、先ほど「やりづらかった」方をやってみると、動きやすくなっているはず。その後何度か左右交互に動かしておく。脊柱や骨盤を左右均等な位置に保つためだ。
2つ目は「上体ひねりチェック」。体を水平方向にひねる動作で、体幹まわりの筋肉の左右差をみる。「やりやすい」方だけ、ゆっくりと息を吐きながら実施し、5秒程度保つ。その時に伸び上がるようにすると効果的だ。その後静かに戻すのを繰り返す。先ほど「やりづらい」と感じた方も、よくひねることができるようになっていると思う。
3つ目は「前後倒しチェック」。背面(背中と太もも裏やふくらはぎ)の筋肉と前面の腸腰筋や大腿四頭筋などのバランスをチェックする。ゆっくりと体を前に倒し、次に腕を伸ばして軽く体を反らせる。「やりやすい」方だけを3回程度繰り返す。同様に「やりづらい」方もよく動くようになっているはずだ。
なぜ「やりやすい」方だけをまず繰り返すのか。やりやすい方の筋肉は強くてこわばり、鬱血状態のことが多い。これを緊張させると、筋肉が太く短くなり中の静脈が押され老廃物が押し出される。その後力を抜くと動脈に血液がドッと流れ筋肉の弾性が取り戻せると考えられるからだ。
運動する際には今自分が動かしている筋肉に意識を集中し、息をこらえず、ゆったりとする。手入れすれば「体は応えてくれる」。筋肉をほぐして変化する体を感じ、継続してメンテナンスを。腰痛なども次第に軽くなるだろう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木 邦子)
[NIKKEIプラス1 2017年4月1日付]
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