シーズン到来、潮干狩り攻略法 時間選びから保存まで
潮干狩りがゴールデンウイーク過ぎにかけてシーズンを迎えている。最近は家族連れに交じって「おひとり様ハンター」が増えていると聞き、3月中旬の昼すぎ、千葉県富津市の富津海岸潮干狩り場に出かけた。
潮干狩り歴64年の「潮干狩り超人」、原田知篤さん(67)からアドバイスを受け、熊手と網、クーラーボックス、空のペットボトルを用意。3月はまだ水が冷たいので、長靴を持っていく。入場料1800円(中学生以上)を払い、浜に入った。
潮干狩りには昼間に大きく潮の引く日が最適で、潮位が低くなる大潮と中潮の日が向いている。この日は中潮。「干潮の2時間前から掘り始めるのがいい」(原田さん)と聞き、正午過ぎから始めることにした。
シーズンが幕開けしたばかりなので、人はそんなに多くない。それでも60~70人くらいか。皆、黙々と熊手やシャベルで砂を掘っている。夏の海辺のようにきゃっきゃと喜ぶ声は、ほとんど聞こえない。
アサリは波が直接当たらない場所に生息している。潮が引いていく時は干潟の地形が分かりやすく、アサリのいるポイントを見つけやすい。アサリが呼吸をするために水管を出す際にできる小さな穴が狙い目だという。第1のポイント、「むやみに掘るな。目指せ穴探し」。
穴に目をこらして浜辺をうろつく。さほど人が多くないこともあり、5分もしないうちに見つかった。ホントに小さな穴がぽつりと開いている。
しゃがんで穴の周りを熊手でガリガリと掘ってみた。すると、ちょっと小ぶりだが、アサリが出てくる。幸先がいい。原田さんは「アサリは固まっていることが多い。一つ見つけたら近くにもたくさんいますよ」と言う。これは期待できるぞ。
ところが、掘っても掘っても次が出てこない。深くまで掘ってみたがだめ。「約5センチまで掘っても見つからない場合は、別の場所を探すといいんです」。え、そうなの? 早く言ってよ。転進だ。
次の穴を見つけると続けて5個、掘り当てた。その次も5個。よし、この調子。初心者でもすぐ楽しめるというのは本当だ。しかし、安心は禁物。次の穴付近はまったく採れず。採れても死んだ貝で、がっかりする。第2のポイントは「採れるかどうかは運試し。くじけず次へ」。
採れたり、採れなかったりを繰り返すこと2時間。腰が痛くなってきたのをしおに終了する。採ったアサリを放り込んだ手元の網を見ると結構な量になっていた。この潮干狩り場では2キログラムまで持ち帰れるが、限度にはやや足りなくて残念。
実は、家族連れやグループに交じって「1人で潮干狩りをするのはどうなのか」と、最初は抵抗があった。掘っている間に周りをうかがうと、明らかにおひとり様の男性を見かけた。「同好の士」を見たようでうれしくなった。
1人で行動することが好きで「『ぼっち』の歩き方」の著書があるライターの朝井麻由美さんは、潮干狩りは「周りに家族連れやグループがいても、個々が黙々と掘っているので、自分が1人でいたとしても浮くことがない」のがいいという。しかも「マイペースででき、貝を採る過程を楽しめるので、充実感がある」と話す。なるほど。
潮干狩りは子供からお年寄りまで楽しめる年齢を問わないマリンレジャー。しかも、ボウズ(釣果がないこと)がなく、達成感が得られる。掘り始めると夢中になり、周りは目に入らない。1人カラオケや1人焼き肉のように、1人潮干狩りも「あり」だ。
◇ ◇
冷凍なら3ヵ月保存OK
潮干狩りには、自分で採ったアサリなどを帰ってから食べる楽しみが待っている。持ち帰る際は、まずアサリは水道水などで洗い、砂を落とす。水でぬらした新聞紙に包んでクーラーボックスに入れ、その上に保冷剤を入れる。ペットボトルには海水をくんで入れ、持ち帰る。
砂抜きには「キッチン用のトレー付き水切りかごを使うといい」と原田さん。アサリを重ならないようにかごに置き、海水をちょうどつかるくらいに注ぐ。新聞紙をかぶせ、2~3時間ほど置く。
その後に海水から上げ、塩抜きのためにさらに1時間ほど置く。水洗いをして、みそ汁やパスタ、焼きそばなど料理の具材として使う。
アサリは生きたまま、ぬれた新聞紙に包んでおけば冷蔵庫で2、3日もつ。食べきれないアサリは元気なうちに冷凍保存するといい。ポリ袋に入れておくと、3カ月程度、保存できる。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2017年4月1日付]
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