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新入社員の多くが4月から職場にやってくる(2016年、リクルートキャリアの合同企業説明会)

新入社員の多くが4月から職場にやってくる(2016年、リクルートキャリアの合同企業説明会)

まもなく多くの職場で新入社員を迎える時期がやってくる。人手不足下でせっかく採用したのに、対応を誤ると、彼らの意欲を失わせかねない。毎年起きるこの課題。上司や先輩はどう接したらいいのか。彼らの今風な特徴をつかみ、上手につきあう方法を専門家に聞いた。

「新入社員との接し方を考えるなら、まず相手のことを知ることが大事」。そう話すのは人材教育会社、グローバルナレッジネットワーク(東京・新宿)の田中淳子さん。新入社員研修などで長年、講師を務めてきたベテランの人材教育コンサルタントだ。

田中さんによると、今どきの新入社員は一見、優等生が多いという。遅刻、居眠り、忘れ物などはほとんどしない。研修で課題を与えてもそつなくこなし勉強熱心。予習や復習もやってくる。人当たりも良く、きちんとあいさつもできる。

説明して安心感

良いことずくめだが、心配な点も多い。他人の目を気にし、常に自分がどう見られているかを意識する。横並び意識も強く、同期と同じことができているか気になる。だから一人だけ目立つことは極端に嫌がる。

失敗を極度に恐れるため新しいことに挑戦しない。周りは新人だから多少失敗してもいいと思っても、評価を気にする本人には一大事。「会社組織というものは、仮に新人が失敗しても誰かが補うので、大した損害は出ないのだと丁寧に説明し、安心感を与えることが大切」と田中さん。

最悪なのは「心配する暇があったら、考える前に動け」式の昔の考え方で接すること。彼らは納得してから動くことを好む。彼らの心配の源が何か、じっくり耳を傾ける必要がある。

基本的なビジネスマナーの一つに「ホウレンソウ」がある。報告、連絡、相談だが、最近の新入社員はこれができない。その日に来るはずの納品物が出てくる気配がないので本人に尋ねると「(上司が)忘れているかと思いました」「少し先でも大丈夫だと思っていました」など、自分に都合のいい解釈をしたり言い訳をしたりする。

田中さんは「情報化社会で育った彼らは周囲に聞かず、まずインターネットで検索する。答えが出ないと諦める傾向がある」と指摘。つまり一人で抱え込み追い詰められるパターンだ。「困ったら言ってね」という対応ではダメで、日を決めて途中経過を報告させることが大事だ。

リクルートキャリアの就職みらい研究所所長、岡崎仁美さんは「新入社員の伴走者になれ」と言う。彼らは「相手を敵か味方か」で判断することが多い。一緒に走るランナーになれば、信頼関係が生まれる。頭ごなしに注意すれば反発を招き、ひとたび敵とみなされたら、何を言っても本心では聞き入れない。

対処法としては膝をつき合わせて話し合い、相手がわからないことはかみ砕いて説明する。要は新入社員の言い分を傾聴することだ。そして、ささいなことでもいいから成功体験をつくり、達成したらきちんと評価して褒める。その積み重ねが本人のやる気を引き出し、自信につながる。

人格否定は禁物

叱る時も注意が必要。帝京平成大現代ライフ学部教授の渡部卓さんは「かりてきたねこ」と覚えることを勧める。「か」は感情的にならない、「り」は理由を話す、「て」は手短に、「き」はキャラクターに触れない、「た」は他人と比較しない、「ね」は根に持たない、「こ」は個別に叱る。

嫌われる上司はすぐ感情的になり、ネチネチ話す人が多い。だから話は手短にし、いつまでも根に持たない。今の若者は叱られる理由をはっきりさせないと納得しない。キャラクターに触れないとは「グズ」「根暗」など人格を否定することは言わない。他人と比較されるのも嫌がる。皆の前で叱ると恥をかかされたと思い恨まれる恐れがある。1対1で諭すと意外に素直に従ったりする。

新入社員は会社の将来を担う貴重な人材。人手不足の今、彼らを失うようなことになれば、本人はもとより会社にも大きな損失になるだろう。そうならないためにも初期対応が重要だ。

[日本経済新聞夕刊2017年3月13日付]

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