冬野菜、パンに合うジャムにしてみた 決め手は食感
甘みは豊か
パン食でも手軽に旬の野菜を取り入れたい。砂糖を加えて作り置きができるジャムにしたらどうだろう。根菜、青菜などの風味や香りをとじ込め、手作りしてみた。
冬の野菜は甘い。育ちながら自らが凍らないよう、水分を減らして糖度を高めるからだそうだ。アタゴ(東京・港)の「ポケット糖度計PAL-1」で家に買ってある野菜の糖度を測ってみた。リンゴ10.2%に対し、ゴボウは17.5%とかなり高い。ニンジンは8.3%、レンコン7.4%、タマネギは6.8%ある。
我が家の朝食は3、4種類の野菜入り具だくさんみそ汁と、ご飯が定番だ。でも休日は子どもたちがパンを食べたがる。
パン食の日に野菜をたくさん食べるにはどうしたらいいか悩んでいた末に、「野菜をジャムにしよう」というアイデアにたどり着いた。
市販のペクチンで とろみ付ける
ゴボウやダイコンでもできるのだろうか。「理系料理研究家」でジャム作りに詳しい熊谷真由美さんを訪ねた。「日持ちさせるジャムには、しっかり砂糖を入れること。とろみは食材に含まれるペクチンという物質が作り出す。野菜には足りないものがあるので、市販のペクチンを使う。酸も重要なので、レモン汁を入れましょう」
熊谷式の野菜ジャムのレシピは野菜200グラム、砂糖100グラム、水50グラム、市販のペクチン10グラム、レモン汁大さじ1。硬い野菜、つぶせない野菜があるので、半分はすり下ろし、残りは刻む。材料を混ぜて常温で8時間以上置いた後、鍋に移して中弱火で混ぜながら煮詰める。レモン汁を入れ、ジャムを皿に載せて裏返して落ちないほどの硬さになったら出来上がりだ。
よし、自作に挑戦だ。素材は生協で頼んでいる旬野菜セットを中心に、ダイコン、ゴボウ、里芋、小松菜など9種類に決めた。加熱時間はそれぞれ違ったが、5~15分ほどで完成した。家族と週末の朝、パンにつけて食べ比べた。並んだジャムを前に「ピクニックみたい」と夫が目を輝かせた。
我が家のおすすめ ユリ根とレンコン
おいしさと、ジャムとしての驚きがあるかどうかで評価した。我が家の最高おすすめジャムはユリ根とレンコンの2つ。ユリ根はそのままホイル焼きにするとホクホクした食感だが、ジャムにすると上品な風味が際立つ。パンにつけずにそのまま食べてもスイーツのようにおいしい。ペクチンは入れなくても、ゆでてつぶすと、いい柔らかさになるから作り方も簡単だ。
レンコンはパンの柔らかさと、歯応えの対比が楽しい。最初に基本レシピ通りに作ったら、もちもちしすぎたが、こちらもペクチンなしの素材のみでジャムの感じが出た。
おいしさはOK。ただこれほどの感動はないというグループがダイコンとゴボウだ。「リンゴジャムは甘ったるく感じるけど、ダイコンはさっぱりした甘さでいいね。でも驚きはない」とは夫の評価。ゴボウは野趣あふれる独特の香りと食感が好きな人には薦めたいが、好みは分かれそう。それぞれパンに塗りやすくするためにすり下ろす割合を4分の3に増やして作ってもみたが、基本のレシピの方が素材の持ち味が出た。
評価が低かったのはニンジンとタマネギ。味はほとんど果物のジャムのようで、野菜嫌いでも食べられそう。ただ「私をジャムにして」と訴えかけてくる感じは全くなかった。タマネギは基本レシピ通りだと生の臭みや辛みが残った。2度目はみじん切りにしてフライパンで生臭みが抜けるまで加熱した後、煮詰めたら、いい味になった。
残念ながら失敗作だったのは小松菜と白菜と里芋。小松菜と白菜はゆでてすりつぶしたり、ジューサーで混ぜたりしたがどうしても滑らかに混ざり合わない。特に小松菜はゼリーのようなとろみ部分と、粉砕した葉が分離して見た目にもおいしいとは思えなかった。
白菜はジュースにした時点では十分な量があったものの、煮詰めると一口分に激減してしまった。食材の水分量が多すぎるのだろう。食べても後味にぼんやり風味が残るだけの甘ったるいゼリーという印象だ。里芋はユリ根と同じ作り方をしたが、冷めるとパンにぬれないほどの硬さになった。
熊谷さんに失敗作以外を試食してもらう。「どれも味はパンに合いますね」。ユリ根は和菓子で使う食材だけに「甘栗を刻んで入れてもいい」。ゴボウやニンジン、タマネギは「黒パンに生ハムを乗せたり、チーズやゆでた鶏肉に合わせたり、クリームチーズに混ぜてマーブル状にしてもおいしそう」。
いろんな野菜で腕を振るう「ジャムおばさん」への一歩は確実に踏み出せたようだ。
野菜の特徴つかむ必要
小松菜と白菜はイマイチで、青菜のホウレンソウはあきらめたと熊谷さんに話したら「たっぷりの湯に重曹大さじ1を入れてゆでるだけでペースト状になり、作りやすいですよ」という。計1分半ゆでた後で軽くすすいだら、簡単に根や筋を外せる軟らかさに。野菜の特徴をつかむのが大切と知った。しらすやクリームチーズ、ハムと合わせて食べた。作ったジャムは小分けし冷凍すれば、いつでも楽しめる。庭にトマトやナスが実る季節が楽しみになった。
(畑中麻里)
[NIKKEIプラス1 2017年2月25日付]
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