リビング大胆に広々 マンション、部屋数より家族一緒
リビングの間取りを広めにとり、趣味や仕事、子どもの学習といった多彩な活動に活用する人が増えている。中古マンションのリノベーションでは、個室を小さくしたり、部屋数を減らしたりして、リビングを広くとるのが人気。リビング重視の間取りを備えた新築マンションも登場している。
「家族で時間を共有したい」――。東京都港区のマンションに住む会社員、宮内忠信さん(52)一家は、30畳以上ある広いリビングをフル活用している。長女(12)は中学受験の勉強を、長男(8)も大好きな工作を、それぞれがリビングで取り組む。宮内さんもたまに仕事を持ち帰ったときは、リビングでこなすことが多いという。
物件の面積は約90平方メートルと4LDKにもできるサイズ。もともとの間取りも2LDKとリビングが広かったが、宮内さんは新築購入の際に、あえて1LDKにリノベーションした。リビングのうち生活のスペースと夜に布団を敷くスペースは横幅約4メートルの収納で仕切っているが、上部を空けて一体感を持たせている。6畳の個室は物置として使っているため、通常は家族全員がリビングで過ごしている。
宮内さんほど大胆にはいかなくとも、リビングを広く確保する屋内改装が人気だ。リクルート住まいカンパニー(東京・中央)によると、4LDKを3LDKに、3LDKを2LDKにして、その分リビングを広くするリノベーションが増えているという。池本洋一・SUUMO編集長は「親子の関係性の変化やマンション価格の値上がり、テレワークの増加が背景にある」と分析する。
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リビングの機能として真っ先に思い浮かぶのは、家族でリラックスし、お互いにコミュニケーションをとりやすい点だろう。過去10年ほどで、子どものリビングでの学習が加わった。
最近は政府の働き方改革を受けてテレワークが改めて注目を集めており、家庭内での仕事場としての機能が加わりつつある。広いリビングなら、親が子どもを1人にせずに仕事ができるというわけだ。
子ども側の意識も変わってきた。リクルート住まいカンパニーが昨年11月にマンション購入世帯を調査したところ、自宅で過ごす時間の内、小学生は76%、高校生でも46%をリビングで過ごしている。「スマートフォンの普及もあり、自室でなくとも自分の時間が過ごせるようになってきた」(池本編集長)
新築マンションの場合は、価格の高止まりがリビングを充実させる流れに拍車をかけそうだ。価格を抑えるため、3LDKで70平方メートル未満といった小さめの物件がみられるようになってきた。寝室の広さはあきらめても、家族で過ごすリビングは妥協したくないと工夫を凝らすケースが増えている。
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コスモスイニシア(東京・港)の新築マンション「イニシア葛西」(東京・江戸川)は、全32戸中、11戸に「ポケットベース」という小さな部屋をしつらえた。大きさは、幅2.7メートル、奥行き1.6メートル、高さは1.8メートル程度。広さ約2.6畳の、箱形の立体空間で、通常の間取りなら収納になるところに設置する。
ポケットベースは簡易の子ども部屋として機能する。内部は階段状の立体構造になっており、上部の空間も使えるため意外に広く感じられる。最上部には学習机などとして使えるカウンターがついており、階段を椅子として使うこともできる。
ポケットベースは5.2畳の洋室と15.6畳のリビング・ダイニング・キッチンの間に配置。ポケットベースの引き戸を開ければ、合計約23畳の一体空間として活用できる。親がリビングやキッチンにいながら、ポケットベースにいる子どもと時間を共有できるようになっている。
近年はリビングを簡単に広げられるよう、隣接する洋室との間仕切りを可動式にした間取りも増えている。部屋の中に後付けで設置できる小屋も、様々なものが登場している。
可動式であればわざわざリノベーションせずとも、自宅での生活を充実させることができる。手軽に取り組める間取り変更から試してみるのもいいだろう。
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スペース有効利用
不動産経済研究所(東京・新宿)によると、首都圏の新築マンションの平均価格は2016年に5490万円。3年連続で5千万円台の大台に乗っている。面積を小さくして価格を抑え、限られたスペースを有効利用する方法に注目が集まる。
(商品部 龍元秀明)
[日本経済新聞夕刊2017年2月22日付]
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