もうすぐ満開 ご当地ひなまつり10選
マップ片手に巡ってみて
もうすぐ桃の節句。伝統的なひな人形を鑑賞しながら町を散策したり、行事を体験できたりする多彩なひな祭りが各地で花盛りだ。そこで専門家におすすめのひな祭りを選んでもらった。
上位には「つるしびな」と呼ばれる、人形や小物の細工物をつるして飾るひな祭りと、数多くのひな人形を一堂に飾る「ビッグひな祭り」が入った。歴史的な町並みが会場となるひな祭りも高い評価を集めた。
人形文化に詳しい大妻女子大の是澤博昭准教授によると、ひな祭りの起源は江戸時代に遡る。ひな人形を使って遊ぶ「ひな遊び」は17世紀半ばの記録に残るが、「ひなまつり」の言葉が登場するのは18世紀初め。当初は女性の祭りだった。女児の誕生を祝うためにひな人形を飾り始めたのは、18世紀半ばとみられる。倹約令の対象になるほど豪華さを誇った時代の人形もあれば、庶民が手作りした素朴な飾りも残る。
今回紹介したひな祭りの多くは、ひな人形の展示場所が個人宅や商店など多岐にわたる。訪問前に公開時間や料金、定休日を確認しておきたい。春めいた日差しのもと、マップを片手に散策しながらひな祭りを過ごしてはいかが。
素朴な和裁細工に庶民の願い(静岡県東伊豆町)
伊豆の稲取温泉に江戸時代後期から伝わる、娘の成長を願って手作りした「つるし飾り」の風習を受け継いだひな祭り。高価なひな人形に手が届かなかった庶民が、様々な願いを託して飾った和裁細工の人形や小物の「素朴な手作り感を屋内外の展示で楽しめる」(富本一幸さん)。4位の「柳川雛祭り さげもんめぐり」、山形県酒田市の「傘福」とともに日本三大つるし飾りともいわれる。「茶会など様々なイベントが温泉の宿泊とともに楽しめる」(森岡順子さん)。早咲き桜の名所も近いため「河津桜まつり(3月10日まで)と合わせた訪問が人気」(横畠麻実さん)。
(1)3月31日まで(2)「文化公園 雛の館」「むかい庵」の入館料各300円など(3)伊豆急行伊豆稲取駅(4)0557・95・2901(稲取温泉旅館協同組合)
石段に1800体 迫力満点(千葉県勝浦市)
日本最大の享保ひなの段飾りや御殿びな、平飾りひななど約8000体を飾る勝浦市芸術文化交流センター(キュステ)をはじめ、市内各所でひな人形を鑑賞できる。「約1800体が石段に並ぶ遠見岬(とみさき)神社は迫力満点。夕暮れ時にはライトアップも楽しめる」(市川茜さん)。稚児衣装を着た子どものひな行列(2月25日)やひな人形供養(3月5日)、スタンプラリーも実施。「勝浦名物のタンタンメンで暖を取るのも楽しい」(早川修平さん)。
(1)2月24日~3月5日(2)キュステ入館料300円(3)JR外房線勝浦駅(4)0470・73・6641(ビッグひな祭り実行委員会)
高さ8メートル 圧巻ピラミッド(徳島県)
1988年に始まった元祖ビッグひな祭り。会場中央には高さ8メートル、ピラミッド型で百段のひな壇がそびえ、周辺のひな壇と合わせて約3万体のひな人形が並ぶ。土日は館内で阿波踊りや楽器演奏も。「ひな壇ではなく庭園や家屋に飾る『おひな様の奥座敷』など、町がひな祭り一色になる」(山田祐子さん)。3月下旬は桜と一緒に。
(1)2月19日~4月2日(2)人形文化交流館の入館料300円(3)JR徳島駅から徳島バス(4)0885・42・4334(人形文化交流館)
おひな様の水上パレード(福岡県)
初節句に飾る縁起物「さげもん」を市内各所で鑑賞できる。さげもんは「ツルやウサギ、ヒヨコなどの布人形と鮮やかな柳川まりを組み合わせたつるし細工」(加藤健司さん)。江戸末期に始まったといわれ「風土と伝統が残る情緒あるひな祭り」(芳賀日向さん)。3月の土日は特別ルートの川下り船も。「おひな様の水上パレード(3月19日)は必見」(市川さん)。
(1)4月3日まで(2)一部有料(3)西鉄柳川駅(4)0944・74・0891(柳川市観光案内所)
400年以上続く「谷地ひな市」に合わせ、旧家の時代びなを公開。紅花交易で栄えた江戸時代に京都から伝わった人形が中心で「旧家の部屋いっぱいに飾られる」(加藤さん)。人形制作の実演や体験もある。「京都とつながりのあった町の息吹が、旧暦3月という江戸の時間軸とともに立ち上がる」(是澤博昭さん)。
(1)4月2、3日(2)紅花資料館と2会場の共通券500円(3)JRさくらんぼ東根駅からバス(4)0237・72・3787(谷地ひなまつり実行委員会)
蔵や土蔵など伝統的な建物が並ぶ保存地区とその周辺の約180軒に、江戸時代や明治、大正のひな人形が並ぶ。来訪者をもてなそうと2003年から始まった。「先祖代々のおひな様を眺めながら、風情ある町並みを散策できる」(<たびねす>編集部)。人形浄瑠璃(19日)や流しびな(3月3日)も。「江戸時代から続く町並みに歴史情緒がある」(早川さん)。
(1)3月3日まで(2)無料(3)土日のみJR岩瀬駅から臨時バス(4)0296・55・1159(桜川市商工観光課)
1300年の歴史を持つ十二所神社の参道にある「百段階段」に、約1000体のひな人形が並ぶ。「百段に飾られたひな人形は圧巻」(山田さん)。来場者には甘酒やひなあられが振る舞われる。午後5時から7時までライトアップを実施。常陸大子駅前では特産のリンゴを使ったアップルパイの販売も。町内約150の商店や事業所でも2月18日から3月5日まで各種ひな人形を飾る。
(1)2月26日、雨天中止(2)無料(3)JR常陸大子駅(4)0295・72・0191(大子町商工会)
岐阜・飛騨地方に伝わる土びな約1000体を展示する「飛騨の里」などの観光施設や、市内の商店、宿泊施設で古今びなや享保びななどを鑑賞できる。
(1)3月1日~4月3日(2)「飛騨の里」入館料700円など(3)JR高山駅(4)0577・36・1011(飛騨・高山観光コンベンション協会)
江戸の古今びなや土人形などの古びなを25会場で公開。昭和のひな人形や手作りびなも23カ所で展示する。ミズキの枝に飾る岩手・遠野地方の「みずきびな」の販売や流しびなも(3月3日)。
(1)2月24日~3月5日(2)一部有料(3)JR遠野駅(4)0198・62・1333(遠野市観光協会)
町家造りが並ぶ新潟・村上市の約80軒にひな人形や土人形など約4000体を展示。「軒先ではなく茶の間に展示するのが魅力」(早川さん)。「サケや村上牛を使った『どんぶり合戦』も」(富本さん)。
(1)3月1日~4月3日(2)無料(3)JR村上駅(4)0254・53・2258(村上市観光協会)
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ランキングの見方 選者の評価を点数に換算した。名称(開催地)。(1)開催日、期間(2)大人1人の料金(3)最寄り駅(4)問い合わせ先電話番号
調査の方法 日本観光振興協会の「全国観るなび」などの情報を基に、28カ所のひな祭りをリストアップ。「魅力的なひな人形を鑑賞できる」「地域の魅力が味わえる演出や企画が用意されている」などの観点から専門家がそれぞれ10位までの順位を付け、編集部で集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
市川茜(コモリブ編集部)▽加藤健司(鶴岡八幡宮教学研究所所長)▽是澤博昭(大妻女子大学准教授)▽富本一幸(トラベルニュース編集長)▽トラベルjp<たびねす>編集部▽芳賀日向(祭り写真家)▽早川修平(コズレ)▽森岡順子(日本観光振興協会総合調査研究所主任研究員)▽山田祐子(井門観光研究所代表取締役)▽横畠麻実(クラブツーリズム総務部)
[NIKKEIプラス1 2017年2月18日付]
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