「地域アプリ」で旅行気分 名所巡り、名産品ゲット
今年で10年目を迎えるふるさと納税で、各地域が相次いで工夫をこらした返礼品を考案し話題になっている。そんな中、気軽に地域の魅力を知り発信するツールとして、アプリが注目されている。
ITベンチャーのごちぽん(東京・新宿)のゲームアプリ「ごちぽん」は、すごろくで全国の名所を巡る疑似体験ができ、遊ぶだけでご当地名産品がもらえることで人気を博している。2015年の配信開始以来、ユーザー数は200万人を超えた。
「ちょっとした旅行気分を味わえて楽しい」。2年前からごちぽんを利用する神奈川県在住の加賀久乃さん(52)は、家事の合間などに遊んでいる。
隠れ名所を紹介
ごちぽんは、日本列島を市区町村や観光名所単位で163のステージに分け、南から北上してゲームを進める。各ステージでマスに止まると、ユーザーが投稿したその土地の名所や名産品の写真と解説を見られる。
ごちぽんは「ご当地にっぽん」の略。経営企画部の井上健部長は「ネットで検索してもすぐに見つからない『隠れ名所』を知らせて、興味を持ってもらうのが役目」と話す。
利用者には、遊ぶだけでご当地名産品が当たるのも魅力だ。ゲーム内でためるポイントを「応募券」に変える仕組みで、実際の商品の抽選に応募できる。
愛知県の伊藤まゆさん(27)は、1年間で鹿児島県の「佐多岬オーガニクスの月桃の化粧水・乳液セット」など33個の商品を当てた。「各地の商品や地域の魅力も分かる」と満足げだ。
名産品の提供企業は3000社を超え、肉や魚、菓子など食品が7割ほど。最近は宿泊施設の宿泊券が増えているという。
群馬県に特化して地域活性に貢献するのが、スマホアプリを手がけるRucKyGAMES(ラッキーゲームス、東京・中野)のゲームアプリ「ぐんまのやぼう」だ。ストーリーは群馬県が全都道府県を「せいあつ(制圧)」して、同県の領土を日本全国、世界、宇宙へと広げていくシンプルなもの。画面を指でなぞり、県の特産品を「しゅうかく(収穫)」するとポイントがたまる。各都道府県は実際の人口数に応じて制圧できるポイントが決められている。
群馬の知名度アップ
アプリ配信を始めた12年、ブランド総合研究所の地域ブランド調査で群馬は最下位。本間和明社長は同県北群馬郡吉岡町の出身で「群馬はこれという特産品も多くないため、いっそ全国を群馬化しちゃえという発想が浮かんだ」と経緯を語る。同氏は群馬の知名度を高めた功績を認められ、12年から同県の「観光特使」を務めている。
昨年末には「ぐんまのやぼう2017」をリリース。収穫できる特産品をコンニャクなど3種類からマイタケやだるまなどを加えた50種類に拡大。ダウンロード数は初期版からシリーズ合計で140万に上る。
保険会社のシステム開発を手がけるB-Prost(東京・港)の「Wonder! NIPPON(ワンダー! ニッポン)」は、地域の観光やグルメの情報を閲覧できるアプリで、姉妹アプリを併用することで、投稿もできる。
昨年11月に配信されたばかりで、ダウンロード数はまだ姉妹アプリとの合計で500ほど。掲載には組織も個人も申請が必要だ。現在は島根県津和野町、佐賀県小城市など利用するのは5グループのみだが、年内には市区町村単位で500まで増やしたい考えだ。魚住憲治社長は「里山の風景や昭和的なネオン街など地元では日常の光景でも、それを望む人が必ずいる」と意気込む。
地域紹介アプリで、春休みなど、少し先の休暇に向けて、旅先を探してみてはいかがか。
(メディア戦略部 夏目祐介)
[日本経済新聞夕刊2017年2月16日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。