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子どもの学び

鳥は種類によって歌がちがうよね?

NIKKEIプラス1

2017/2/11付 NIKKEIプラス1

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■鳥は種類によって歌がちがうよね?

スーちゃん 世界には歌声のきれいな小鳥が多いと図鑑に書いてあった。鳥の種類によって歌い方が違うのに、自分たちの歌をよく知っているよね。まわりでいろいろな歌や音が聞こえてきたら、歌を間違えそうだけど。どうやって歌えるようになるのだろう。

■テンポを感じて、親鳥の歌をおぼえるんだ

森羅万象博士より 人間の赤ちゃんが親やまわりの人の言葉をまねるのと同じしくみだよ。親の歌い方をおぼえて、練習をしながらだんだんとうまく歌えるようになるんだ。

 歌う鳥は「ソング(歌)バード(鳥)」というよ。ニワトリやアヒルも鳴くけど、歌がうまいとはいえないね。

 有名な歌う鳥に、オーストラリアに生息するキンカチョウがいるよ。

 生まれてから1カ月くらいで歌うようになり、4カ月ほどで大人の歌を歌い始める。メスに好かれようとオスが歌うよ。メスに気に入ってもらうには歌がうまい方がいいから、必死におぼえるんだね。自分のいる場所を守るときも歌うそうだよ。

 不思議なのは、自然界には色々な種類の鳥がいるのに、ジュウシマツの子はジュウシマツの歌を、キンカチョウの子はキンカチョウの歌を歌うんだ。自分たちの歌を正しく子どもへ伝えるしくみがあるんだね。

 まず親の歌をおぼえるには、たくさんの音の中から聞き分けないとだめだよ。野外では鳥の鳴き声のほかにもいろいろな音が聞こえてくる。そのなかから、親の歌だけを自分たちの歌だとわからないといけないんだ。

 生まれたばかりのひな鳥が、どうやっているのだろう。沖縄科学技術大学院大学准教授の杉山陽子さんの研究によって少しずつ分かってきているよ。飼いやすくて体のしくみがわかっているキンカチョウで実験したんだ。

 人間の歌にも「ゆっくり」「速い」といったテンポがあるように、鳥も種類によってテンポが違うよ。歌声はずっと音を出し続けているわけではなく、音が途切れて静かになるときもあるよね。

 杉山さんの研究によると、キンカチョウのひな鳥は、音と音の間に静かな時間が入るテンポを脳(のう)で感じるしくみを持っていたんだ。色々な歌声の中で、自分が感じたテンポから親鳥の歌声が分かるみたい。「このテンポなら、自分たちの歌だ」と自然に気づくんだね。

 テンポのようなリズム感は分かっていても、歌をおぼえないと歌えないよね。もしも、親や同じ種類の鳥がいない状態で育つとどうなるのか、そんな実験も杉山さんはしているよ。

 ジュウシマツを親にして、ジュウシマツの歌声しか聞こえないカゴでキンカチョウのひな鳥を育ててみたんだ。そうすると、鳴き声はジュウシマツなのに、テンポはキンカチョウという不思議な歌を学んでしまった。テンポは生まれる前から体でおぼえていたんだね。

 鳥が歌えるようになる理由を研究すれば、人間の赤ちゃんが言葉を学ぶしくみも分かるかもしれないよ。外国の言葉も話せるようになったらいいね。日本語しか使っていないと英語やフランス語は難しいと思えるけど、効率よく覚えられる方法が鳥の研究から見つかったらうれしいね。

■遺伝?学習?研究進む

博士からひとこと 鳥が歌うしくみの研究は、1970年代以降に米国で研究が進んだ。種ごとに違う歌声を習得できる謎の解明に関心が集まり、日々の行動から探る「行動学」と、脳の働きを観察する「脳科学」という主に2つの方法で調べられてきた。現在は、遺伝による生まれつきというよりも、生まれた後の学習が注目されている。
 飼育しやすいなどの理由から、歌う鳥の代表としてキンカチョウを使った実験が多い。人間が言葉を学ぶしくみに迫る手掛かりになるほか、ひな鳥が親の歌声を識別する方法をコンピューターの情報処理に生かすといった思わぬ応用展開もあるという。

(取材協力=杉山陽子・沖縄科学技術大学院大学准教授)

[NIKKEIプラス1 2017年2月11日付]

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