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空港が育む!? 工業都市・北九州の意外な名産「カキ」 殻磨く手間、うまみ増す

2017/2/7付 日本経済新聞 夕刊

クセのない濃厚なうまみが特徴の「豊前海一粒かき」(はちがめ)

 臨海部に工場群が広がる工業都市のイメージが強い北九州市に、福岡県最大の水揚げ量を誇る意外な海の幸がある。冬場に旬を迎える「豊前海一粒かき」だ。クセのない濃厚なうまみが特徴で、広島や宮城などの名産地に勝るとも劣らない。同市が県内最大のカキ産地となった秘密は、曽根干潟の沖合約3キロメートルに浮かぶ北九州空港にある。

 北九州市東部沖から大分県北部沖に広がり、「豊前海」とも呼ばれる周防灘の一部海域。豊前海一粒かきは福岡県内の漁業団体が2009年に商標登録したブランドカキで、豊前海のうち同市東部から同県豊前市までの海域で養殖されるものを指す。毎年12月から翌年3月にかけて産地の沿岸に立ち並ぶカキ小屋などで味わえる。

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 特に北九州市内ではこの時期、カキやワタリガニなどが水揚げされる漁港を経由して観光名所の門司港レトロ地区と北九州空港を結ぶ「北九州カニ・カキロード」沿いなどに直売所やカキ小屋が登場。その数は約40軒に上り、工業都市の冬の風物詩となっている。

 中には漁協直営のカキ小屋もあり、曽根干潟に面した河口のそばに立つ「はちがめ」はその一つ。新鮮なカキを焼いて食べられるほか、牡蠣(かき)グラタンや牡蠣フライ、牡蠣めしなどの料理も楽しめる。

 看板メニューの豊前海一粒かきは一盛りが13個前後。まずカキの平らな面を下にして焼き台の上に並べていく。殻が少し開いたら、ひっくり返してさらに焼く。しばらく焼いたら片手に軍手をしてカキを持ち、殻の隙間にナイフを差し込んでこじ開ける。

 ぷりぷりの身が現れ、冷めないうちにほお張ると、かむ度に濃厚なうまみだけが口の中に広がっていく。クセや臭みのような後味は感じられず、ぽん酢で味を付けなくてもいくらでも食べられるほどだ。

 「臭みがないのは、一粒かきが通常のカキよりも短期間で成長するため」と同店の運営会社の営業部長で、曽根漁協の漁師の松本良太さん(46)。「カキは一般的に出荷まで約2年かかるが、一粒かきは最短8カ月で済む。若いカキを食べられるので、臭みを感じにくいようだ」と続ける。

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