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映画監督・富田克也さん アジアの現実に迫る

『バンコクナイツ』、タイとラオスで撮影

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NIKKEI STYLE

土木労働者と外国人労働者たちの物語を通して、地方都市・甲府の現実に迫った「サウダーヂ」から5年。主人公の楽園幻想を追うように、タイを歩き続けた。

「バンコクナイツ」(25日公開)の主題は「娼婦、楽園、植民地」。全編をタイとラオスで撮った。過去ほとんどカメラが入ったことがないバンコクの日本人向け歓楽街タニヤ通りでも撮影した。現実の労働者が演じた前作同様、現実の歓楽街の女たちが出演する。ピンクのひな壇にずらりと並ぶ女たちの姿は壮観だ。

札びらを切る日本人もいるが、日本に居場所がなくアジアに流れてきた「沈没組」もいる。ナンバー1嬢のラックに向かって「日本に俺のいるとこなんてねえもん。エコノミック・ダウン。メルト・ダウン。エブリシング・ダウン」と語る元自衛隊員オザワもその一人。富田自身が演じる。

「彼女たちがこの映画に出るには覚悟が必要。職業を隠さず、身を切っている。だから僕も身を切るしかなかった。彼女たちと長い時間を共有したのも、タイを歩き回ったのも僕。だから僕がやるのが一番いい」

初めてタニヤを訪れた10年前に構想。「サウダーヂ」を終えた時点では、題名とタニヤを撮ることしか決めていなかった。それから長いタイ暮らしが始まる。

街で三輪タクシーの運転手らと話すうち、彼らの多くが東北部イサーン出身と知る。夜の女たちもそう。「イサーンの強烈な音楽にも興味をもった。娼婦のうたが多い。貧困への怒りや社会情勢への批判がある。プロテストソングだ」

共にタイを回った脚本の相沢虎之助と作り上げたのはラックがオザワと共にイサーンに里帰りする物語。素朴な暮らしに人間味を感じ、この地に楽園を見るオザワ。家族を養うために身を売って成り上がったラック。2人の対立に、日本とタイ、バンコクとイサーンの経済格差の影がさす。

さらに歴史の傷痕が浮かびあがる。ラオス国境沿いのイサーンは言葉がラオス語に近く、ラオ族も多い。かつてはバンコクの中央政府と対立した抵抗勢力が森にたてこもった。ベトナム戦争時は米軍の前線基地が置かれ、川向こうのラオスは激烈な爆撃を受けた。

森に住む抵抗詩人の霊、白人向けバーの退廃、クレーターのようなラオスの爆撃跡……。「植民地という制度は過去のものだが、支配の構造は変わってない。みな資本主義を欲しているじゃないかという主張に、そのことが隠されている」

アジアの厳しい現実に迫りながら「イサーンの人々に多くを学んだ」という。「人を助けること、人に施すことが当たり前の社会。どこが貧しいのか? 日本人には薄れた人間としての筋がすっと通っている」

夜の女たちにも暗さはない。「彼女たちにとってつらいのは当たり前。でも母系社会が彼女たちを抱擁している。彼女たちは家族を支えることを恥じない」

終幕、オザワは銃をもち何を撃とうとしたのか?

「植民地支配の段階が終わり、資本主義も敷きつめられ、どこに銃口を向ければいいかわからない。それでも意思表示したかった。福島原発事故以降、隠されたものが噴き出す中で、そう考えざるを得なかった」

◇     ◇

仲間探し20年の結晶

地域に入り込み、素人を起用し、数年かけて撮る。富田、相沢らの制作集団「空族」の映画作りは今回も貫かれた。

「ダーイ(OK)」と簡単に答えるタニヤ通りの女たちだが「本当の信頼を得るには4、5年かかった」。さらに難しかったのは路上撮影。失敗して国外退去となる恐れもあるから、最後に回した。警察や有力者の許可を得て、撮影を始めたとたん「危ない」と誰かが叫び、撤収。ようやく現れたボスに、それまで撮ったシーンを見せて、懇々と説明し、やっと実現した。

高校卒業後、ミュージシャンを志して上京。日大の高野貴子、早大の相沢らと知りあい、互いの自主映画を手伝ってきた。「サウダーヂ」で山梨のラッパー田我流と出会ったように、今回もタイの人々に加え、フィリピンのラッパーやラオスのプロデューサーら、多くの出会いがあった。

「僕がやってきたのは仲間を見つけていく行為だと思う。それを20年やってきて『バンコクナイツ』に結晶した」

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2017年2月1日付]

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