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キャリアコラム

パワハラかも… 会話で相手理解、社内の味方に相談

2017/1/26 日本経済新聞 夕刊

 職場のストレスの多くは人間関係によって生じる。中でも特につらいのはパワーハラスメント(パワハラ)だ。社員も職場も荒廃してしまう。だが、自分が傷つけられたと感じる相手の言動は本当にパワハラなのだろうか。パワハラと「指導」を分けるポイントや、対応策を専門家に聞いた。

 新人Sさんの上司は暴言で有名だ。「これだから二流大学出は使えない」「給料泥棒は辞めろ」などは日常茶飯。Sさんは最近よく眠れず、会社に行くのがつらくてたまらない……。

■「業務超えた指導」

 厚生労働省によれば、パワハラは同じ職場で働く者に対し「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為」と定義される。上司と部下だけでなく、正社員と非正規社員の間でも発生する。

 だが、自分の心が傷つけられたと感じる相手の言動すべてがパワハラというわけではない。パワハラ問題に詳しいクオレ・シー・キューブ(東京・新宿)の西本智子取締役は、「問題は業務の範囲を超えた表現や継続的な嫌がらせだ」と話す。故意に情報を与えず孤立させたり、過剰な労働を強いたり、人格を否定する言動を繰り返すことなどが問題だ。

 では、どう対処すればいいのだろう。

 まず相手は仕事上の指導をしているだけ、と仮定して考えるところから始める。西本さんは「うまくいかないようなら、コミュニケーションを工夫してみては」と提案する。

 「君は使えない」と言われたら、「どうすれば役に立てるでしょうか。自分でも考えますが、ぜひご指導をお願いします」と話してみる。困っていることを伝えるわけだ。「人と組織を強くする交渉力」の著者で異文化教育コンサルタントの鈴木有香さんも、心にもない謝罪の言葉の連発は、かえって相手の怒りを募らせると指摘する。

 相手を理解することで距離を縮められる場合もある。鈴木さんは「上司にもいろいろな顔がある。怖くても昼食や飲み会で雑談し苦労話を聞いてもいい。よい関係を築きたいという気持ちで接しては」と話す。

■一人で悩まないで

 それでも状況が変化しなければ、社内に味方をつくることだ。西本さんによると他部署の上司や上司の上司など、相手とポジションが同等か上の人に相談するとよい。このとき、相手の言動や態度について伝えるのはいいが、一方的に上司の人格批判は避けるべきだという。「私の成長のためだとは思うのですが」「職場環境を働きやすくしたい」などの言葉を添え、意図して客観的な表現を心がけよう。

 相談相手が見つからず、孤立している場合は、人事部門や労働組合の相談窓口を利用することが望ましい。相談すると、本人と行為者(パワハラをしたと疑われている人)のヒアリングなどが行われ、倫理委員会やコンプライアンス委員会でどう対処するか決まるのが一般的だ。

 だが、東京法律事務所(東京・新宿)の笹山尚人弁護士は「パワハラがなかったと丸く収められてしまうこともある。人事部門など自分と近しい関係にない相手ほど、証拠資料が必要」と話す。

パワハラ相談を受け付ける日本司法支援センター(法テラス)のコールセンター

 問題が解決しなければ労働局の総合労働相談窓口や、サポートダイヤルを運営している日本司法支援センター(法テラス)、弁護士に相談する方法がある。労働審判や裁判の損害賠償請求などに進む際は証拠資料が必須だ。メールや労働時間の記録、音声の録音などがあった方がいい。他にも被害者がいれば、その人たちの話もまとめて提出する。「違法が認定されやすいのは単純なひどい言葉より、暴言に業務と本来無関係な言葉が使われている場合だ。人格や学歴、家族関係などプライベートな内容であればあるほど証拠になる」(笹山弁護士)

 労働契約法で、企業には労働者への安全配慮が定められているが、パワハラを直接禁止する条文はない。笹山弁護士は「私たちは一人ひとりが自分の人格的利益を保護するための権利(人格権)を持っている。一人で抱え込まず自分の人生、人格を一緒に守ってくれる相手を見つけよう」と話していた。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2017年1月23日付]

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