完本 プロ野球 乱闘伝説 佐野正幸著
凄まじく、微笑ましい現場
昨年急逝、熱烈な「パ」のファンから、その縁で入社の近鉄百貨店を経て、専門ライターとなる著者の最後の一冊である。
過去の乱闘を記して、生々しい現場がよみがえる。なにしろ「実は筆者が主役の1人になっている珍しいケース」さえあるのだから。近鉄応援席に暴徒化した西武ファンが侵入、「片っ端から相手にすることとなり、2~3発……」。32年前の虎党の甲子園ジャック。ブルペンに潜む男が「リリーフカーを運転してグラウンドに乱入」。凄(すさ)まじく、ちょっぴり微笑(ほほえ)ましい。
今世紀に入り、過激な観客は去り「博愛」が球場に満ちる。享年63、愛の書き手は「いい世の中」と一応は述べて、本心はさみしそうだ。「セ」に厳しいのはご愛敬。
★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2017年1月19日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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