さまよえる古道具屋の物語 柴田よしき著
人情話から知的な推理に
古道具とファンタジーは相性がいい。長い年月に刻み込まれたエピソードは郷愁を誘うからだ。だが本書は必ずしも見慣れた幻想的物語ではない。
登場する客は、買うつもりのない欠陥品ばかりを買わされる。例えば、お金を入れる口のないブタの貯金箱、取っ手のないバケツや、絵と文章の天地が逆転し、一致していない絵本などである。しかし、買い手の日常は変貌する。一体どんな秘密が隠れているのか。
スタートこそ人情話風ながら、やがて物品自体の、そして不可思議な古道具屋自体の謎に、じわじわ迫っていく。
まるでファンタジーの仕掛けをミステリで解読するような、知的な推理が楽しめるお話だ。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2017年1月19日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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