カズサビーチ 山本一力著
言葉や民族の壁を越えた絆
ペリー来航前夜の1850(嘉永3)年。ロングアイランドはサグハーバーに住む、捕鯨船マンハッタン号の船長クーパーを、ペリーの右腕の富豪C・デラノが訪ねることで幕があく。
クーパーはかつて日本人漂流者22人を救出。彼らを送り届けるため、被弾覚悟で鎖国中の日本へ向かい、これを成功させた過去がある。デラノの来訪は、日本人の気質をペリーに先んじてクーパーに尋ねるためで、ここに言葉や民族の壁を越えた奇跡の絆が描かれる。
作中には、クーパーがゴールドラッシュという拝金主義を嘆く箇所があり、今日の経済のみを是とする政治のあり方や、剣呑(けんのん)な国際情勢に対する本書は頂門の一針といえよう。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2017年1月19日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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