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暮らしの知恵

ペレットストーブ 暖炉のぬくもりを手軽に

2016/12/28付 日本経済新聞 夕刊

 しんしんと冷える冬、暖炉に憧れるが手狭な自宅では無理。そんな人には、薪(まき)のかわりに木くずを固めたペレットを燃やす「ペレットストーブ」が向いているかもしれない。暖炉のような暖かさとくつろいだ雰囲気を手軽に味わえる。炎を眺めながら家族の会話が弾む効果も期待できる。

多田さん宅ではペレットストーブの周囲に家族が自然と集まってくる(宇都宮市)

 宇都宮市郊外にある多田夏雄さん(54)の自宅を訪ねると、居間の一角に置かれたストーブで炎がゆらめいていた。「子どもたちも自然と集まってきて、床で寝転んだりする。こたつのような存在」と、妻の裕紀さん(35)は笑う。

 ストーブで燃やしているのは木質ペレット。木片や削りかすを乾燥させて固めた燃料で、1つが長さ1~2.5センチメートルほどの円筒型。これを小さなスコップですくって、ストーブのなかに注ぎ入れる。あとはスイッチを押すだけで自動的に火が付く。

 ペレットストーブを使い始めて今冬で2年目。自宅の居間は北に面していて、以前は床暖房と電気ストーブ、オイルヒーターを併用してもなかなか暖かくならなかった。ペレットストーブなら1台で用が足りるという。

 「できるだけ地球環境に優しい生活をしたかった」と、多田さん。灯油などの化石燃料を燃やすと大量の二酸化炭素(CO2)が生じる。それに対し木材は成長の過程でCO2を吸収しているため、燃やしても空気中に排出されるCO2の量は変わらない。間伐材や端材を有効活用できるため、林業の振興にもつながる。

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ペレットは長さ1~2.5センチメートル程度の円筒形

 ペレットストーブの機能は年々高まっている。多田さんが使っている米国のハーマン社製は、燃え尽きたペレットを自動的に排出し、新しいペレットを送り込む仕組み。炎の上がっているところに新しいペレットを落とすだけの従来の仕組みに比べて、燃焼効率が良い。温度センサーがついていて、自動でつけたり消したりもできる。

 導入コスト(工事費含む)は70万円程度。それ以外に真冬の場合、ペレットが月に2万円かかるが、多田さんは「以前は電気と灯油で月3万~4万円はかかっていたので、経済的にはほぼトントン」と話す。

 気になるのがペレットを燃やした時に出る煙だ。多田さんの家の周囲を見せてもらうと、外壁から高さ50センチほどの煙突が突き出ている。煙に色はなく、鼻を近づけてもほとんど臭いがしない。一戸建てが並ぶ隣近所からの苦情はないという。

 一方、安価で導入したい人には、機能を絞り込んだペレットストーブがおすすめだ。国内最大手のさいかい産業(新潟市)は、工事費を含めて30万円弱から品ぞろえしている。手動で着火や火力の調節をしなければならない面倒はあるが、比較的時間に余裕がある人であれば使いこなせそうだ。

 従来は暖炉といえば、薪を燃やすストーブが一般的だった。自然との一体感が最大の魅力で、パチッという薪のはじける音が聞こえ、ゆらめく炎が見える。ただ着火しにくく、その際に黒い煙が出る恐れがある。最大のハードルは薪の調達。インターネットやホームセンターで購入できるが、置き場所を確保する必要がある。

 それに対し、ペレットストーブの利点は手軽さだ。「ペレットは薪に比べて均質で着火しやすいうえ、袋ごと部屋のなかに保管しておける」(さいかい産業の山後春信代表)。ただ、給排気などに電気を使うため停電の時に動かせない。

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ペレットと薪の両方を同時に燃やせるストーブもある(栃木県那須町のフィンランドの森)

 ペレットだけでなく時には薪も使ってみたいという人には、両方に対応したタイプがある。仏アンヴィクタ社が今冬に日本で売り出した「ミックス」は両方を同時に燃やせる。導入コストは90万円程度とやや高い。

 総代理店、フィンランドの森(栃木県那須町)の人見友規社長は「来客があったときだけ薪を足したり、平日はペレット、週末は薪と使い分けたりするなど、両方のいいとこどりができる」と話す。

 周囲に民家が少ない別荘地なら、本格的な薪ストーブに挑戦してみてもいい。輸入代理店、メトス(東京・中央)によれば「仕事をリタイアして田舎暮らしを楽しもうという団塊の世代が多く購入している」(岩崎秀明・企画グループ担当部長)という。

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■手間を惜しまずに
 薪ストーブより手軽とはいえ、憧れだけで飛びつくのは危険だ。灯油やガス、電気など通常の暖房器具に比べると、準備や掃除に手間がかかる。自身の生活スタイルに合わせて吟味しなければ、無用の長物になりかねない。

(宇都宮支局長 高橋圭介)

[日本経済新聞夕刊2016年12月28日付]

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