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写真家・石川直樹さん 未知との一期一会、写す

極地の景色も身近な日常も等価

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NIKKEI STYLE

写真家、なのだろうか。北極点から南極点までの人力踏破に23歳で成功、翌年にはチョモランマに登頂して7大陸の最高峰登頂最年少記録を塗り替えた。極地のほか、文化人類学や民俗学の見地から都市や島々を撮影、さらに文章家としても定評がある。

独自の視点と並外れた行動力から世界を見つめ直す地球規模のフィールドワーカー。それが石川直樹の本当の姿だろう。初期から現在に至る活動を紹介する初の本格的な個展「石川直樹 この星の光の地図を写す」が水戸市の水戸芸術館で開かれている(2017年2月26日まで)。

「旅の軌跡を振り返る展示になった。水平から垂直方向まで、1人の人間がたどった道のりとしてはかなりのものではないか」。昨年挑んだ世界2位の高さを誇るK2の作品群をバックに、個展の意義を語る。

広い会場を8ブロックに分けた展示構成。20歳で北米最高峰のデナリ登頂を果たした「DENALI」、10年かけて北極圏の先住民の狩猟文化などを追った「POLAR」などの初期作品群。先史時代の壁画群を探訪した「NEW DIMENSION」、ミクロネシアの島々と原生林を巡った「THE VOID」、トレーニングを兼ねて30回登った「Mt.FUJI」をはさみ、貴重な映像記録も含めた圧巻の「K2」へ。

8000メートル級の山並みや美しく神秘的な南極の氷壁、一歩踏み出せば死の底へと引きずり込まれそうな不気味なクレバスもあれば、ポーターやロバの安らいだ表情もある。踏破してきた道のり同様、作品の写し出す世界は広大だ。

「知ったつもりになってしまうのが嫌い。なんでも自分の目で見てみたいという思いから旅をしてきた」。作品はその貴重な足跡の証拠でもある。「これらが50年後、100年後にどう見られるか、アーカイブとして成立するのか、表現より記録に重きを置いている」という。

その一方で「純粋な記録写真かと問われればそうとも言えない」とも。「シャッターを切るという行為自体に自分が出る。すごいな、苦しい、さみしい、何でもいいが、体が反応したら撮るのが自分の写真術」

撮り手の「今」の感覚を大事にする。それは何百枚も瞬時に撮影できるデジタルカメラを使わない姿勢にも表れている。「フィルムは1本20枚の撮影がせいぜい。あと3枚しか残っていなければそれで撮り切るしかない。撮れなければそれまで。一期一会の出会いが大事」

便利なズームレンズを嫌い、単焦点の標準レンズのみを使うのも同じ理由だ。「対象を大きく写したけれは自分が近づく、つまり"自分ズーム"で撮る。相手に対して恥ずかしくて寄れない、崖っぷちでもうこれ以上近寄れないという距離感も写る」

写真に収めるべきそうした一期一会の偶然はどこにでもあると感じている。展覧会終盤では、九州や沖縄の島々、北陸や東北の祭祀(さいし)儀礼や、福島の女子中高生たちの姿を収めた身近な国内の作品が並ぶ。「旅の記録も中高生を写した写真も全部等価と思っている。極地だから何だ。未知の風景はすぐそこにある」

◇     ◇

透徹した詩人のまなざし

「冒険家としての記録ですね」と問いかけた瞬間、「自分は冒険家ではない。冒険家になれるタイプではない」と即座に否定された。もちろん芸術家でも環境保護の活動家でもない。「作品にメッセージはない。世界の端的な模写。模写にいいも悪いもない」

あくまで写真家なのだと本人は主張するが、もやもやが残った。そんな折、彼の文章を読んでいて、実は彼は詩人か哲学者なのではないかという考えが頭に浮かんだ。

たとえば「ぼくの登山は、川を遡ることからはじまった」の一文から始まる「川 奥多摩」(「全ての装備を知恵に置き換えること」所収)。自らのルーツを少年期の思い出に求めた短いエッセーだが、少年の小さな目に映る川の営みが、大地へ、やがて山や空や海へと開かれていく描写は見事というしかない。

彼の作品には、幾多の経験を経て真理にいきついたような、死の恐怖をも味わい楽しむような、詩人の透徹したまなざしがあるのだ。

(文化部 富田律之)

[日本経済新聞夕刊2016年12月28日付]

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