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そのモノ忘れ、認知症? 目安はヒントで思い出せるか 生活習慣病や飲酒がリスク 運動・趣味で予防

NIKKEIプラス1

2016/12/28 NIKKEIプラス1

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 「知人の名前が思い出せない」という自分の経験や、「財布をどこに置いたか分からない」と言う高齢の親を前に、「認知症かも」と不安になった経験はないだろうか。単なるもの忘れか進行していく認知症なのか、仮に認知症ならどういったタイプなのか。早期に診断し、適切な対処をするために、専門家に見極めポイントなどを聞いた。

 2025年には65歳以上の5人に1人が認知症の時代になると厚生労働省は推計している。認知症とは、様々な原因で脳の働きが低下し、生活に支障をきたした状態。「誰でもなる可能性がある。特別なものではない」と横浜市立大学医学部の小阪憲司名誉教授。

■うつ病と誤解も

 認知症にもいろんな種類がある。いわゆる、もの忘れが代表的な初期症状なのが、アルツハイマー型認知症だ。脳に特殊なたんぱく質が溜まり、記憶を司る海馬を中心に神経細胞が死滅し、脳が萎縮していく。認知症患者の半数以上を占める。

 脳出血や脳梗塞などが原因となるのが血管性認知症。脳の神経細胞に酸素が送られなくなり、脳の一部が壊死(えし)して発症する。もの忘れのほか、手足のしびれや麻痺、頭痛やめまいなどを伴いやすい。

 一方、うつ病と間違われることの多いのが、レビー小体型認知症だ。小阪名誉教授によると「認知症の約20%がこのタイプで、診断技術の向上と共に年々患者数が増加傾向」。レビー小体という特殊なタンパク質が脳内にできて神経細胞が傷つき、死滅して発症する。

 精神症状が目立つのが特徴。例えば「誰もいないのに人が見えると信じ込む幻視(げんし)や、他人が家に入ってきて悪さをするなどの被害妄想があるなら、レビー小体型認知症の可能性が高い」(小阪名誉教授)。筋肉のこわばりや動作が遅くなるパーキンソン症状が見られる場合も。

 これらは「三大認知症」と呼ばれ、高齢者の認知症の約9割を占める。アルツハイマー型とレビー小体型ではなぜタンパク質がたまり、神経細胞が死滅するのか「根本原因が不明」(小阪名誉教授)。脳の血流をよくすることで一部の認知症は治療できるが、元に戻すことは今は難しい。

 加齢による自然な脳の働きの衰えで、誰でも記憶力が低下し、もの忘れをするようになる。単なるもの忘れであれば、取り急ぎは心配いらない。もの忘れか認知症かどうかを早く見極められれば、根治はできなくても既存薬で症状を改善させ、進行を遅らせることも可能だという。

 東京都健康長寿医療センター精神科の古田光部長は「加齢によるもの忘れの場合、細かいことは忘れてもヒントがあるなどすれば思い出せる。認知症では、体験そのものを忘れてしまう」と話す。他人が思い出させようとしても難しいなら、認知症の可能性が高い。

 忘れたことを十分に自覚できなくなるのも認知症の特徴。小阪名誉教授は「日常生活に支障が出るかどうかが目安の一つ」という。忘れたと非難されると落ち込み、抑うつ症状を引き起こすこともある。「抑うつ症状は認知症を悪化させる」(古田部長)ので、認知症と分かっても、周囲がメモに書いて知らせるなど前向きに対処しよう。

■2つの動作並行

 できれば認知症の予防を心がけたい。加齢のほか、大きく影響するのが糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病だ。福岡県久山町での長期間の追跡調査では、糖尿病のある60歳以上の高齢者は認知症になるリスクがそうでない人の約1.7倍高かった。

 12月は飲酒機会が増えるが「若年性認知症の原因の第5位はアルコール性認知症」(古田部長)。常習的飲酒は記憶障害を引き起こし、アルコールは生活習慣病を悪化させる。アルコールと関連した脳血管障害も認知症を引き起こす。

 生活の仕方も考えたい。「変化を持たせて脳を刺激するのが効果的」(小阪名誉教授)。仕事や趣味に夢中に取り組む、人と積極的に話をするなどだ。「家に閉じこもると関心事も減って危険」と小阪名誉教授。外に出て運動すれば血流もよくなる。毎日20分以上の歩行から始めよう。

 話しながら歩く、新聞を読みながら筆記するなど「2つ以上の動作を同時に行えばさらに効果的」(小阪名誉教授)。

 「40歳になったら認知症予防の意識を。特に生活習慣病の管理は認知症予防につながる」と古田部長。心配ならなるべく早く医療機関を受診、専門医による診断と適切な対処を始めたい。

◇     ◇

■「もしや…」と思ったら受診を検討

 認知症かもしれないとなったら、もの忘れ外来のほか、精神科や神経内科、脳神経外科、老年科を掲げる医療機関にいく。ただ「全ての医療機関で対応しているわけではない。受診前に認知症の診断をしているか問い合わせた方が良い」(古田部長)。医師会や都道府県のホームページ、地域の保健所や地域包括支援センターに相談してみるのも良いだろう。

 診察では「どのような変化に、いつごろ気づいたか」「急に起こったのか、いつの間にか始まっていたのか」「気づいたのは本人か、他の人か」「気づいたときと今で変化があるか」といったことのほか、自身や肉親の病歴などが聞かれる。

(ライター 結城 未来)

[NIKKEIプラス1 2016年12月24日付]

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