夢と失望のスリー・ライオンズ ヘンリー・ウィンター著
サッカー母国、失敗の構造
9年前、酒場の友のロンドンっ子に、お国で最高のサッカー記者は? と聞くと「ヘンリー・ウィンター」と即答した。
現在はタイムズ紙在籍、当代の書き手が、胸に3頭の獅子を抱くイングランド代表の失敗の構造を描き解いた。唯一のW杯優勝は半世紀も前、当時のラムジー監督による人心掌握の細部だけでも読み応えがあるが、そこからは負けてばかりだ。
愚かで冷たい協会幹部の列、高給のもたらす若手の飢餓感の欠如、自由にプレーできた校庭サッカーのアカデミー優先による衰退。深い取材、鋭い批評、柔らかな文体。比喩も楽しい。「強風に舞う紙切れを何事もなく掴(つか)み取るかのように」。往年の名手、ムーアのタックルである。
★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2016年12月22日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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