竜は動かず(上・下) 上田秀人著
仙台藩士から描く幕末外交
まずは今年最後の書評を、本書のような傑作で締め括(くく)ることが出来ることを、言祝(ことほ)ぎたい。上田秀人の著作は、今年百冊を突破したが、その旺盛な作家活動の中でも、私が見るところ、この一巻が現時点における最高傑作であることはほぼ間違いない。
主人公である仙台藩士・玉虫左太夫は、新見(しんみ)豊前守(ぶぜんのかみ)、勝海舟らと亜米利加に渡り、彼我の国力の差や列強の植民地政策の実態を目の当たりにする。そして帰国するや腰を温める間もなく動乱の京へ。ここでの坂本龍馬との問答の面白さなどちょっと比類がない。
そして後半、左太夫は、奥州独立の夢を奥羽越列藩同盟に託すのだが――。外交が見直されている今、必読の一巻だ。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年12月22日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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