日本文学全集07 池澤夏樹=個人編集
創作のような古典の翻訳
河出書房新社版の日本文学全集、最新刊。古典の翻訳である。今回は、枕草子を酒井順子が、方丈記を高橋源一郎が、徒然草を内田樹が訳している。
高橋訳の方丈記を読んで、吃驚(びっくり)。誰もが知っている冒頭は、「ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。淀(よど)みに浮かぶうたかたは……」。
高橋はこう訳す。「あっ。歩いていたのに、なんだか急に立ち止まって、川を見たくなった。川が流れている。そこでは、いつも変らず、水が流れているように見える。けれども、同じ水が流れているわけではないのだ。あたりまえだけれど。」
一番驚いているのは、鴨長明かな。しかも作者は「カモノ・ナガアキラ」と表記。翻訳とは創作である。
★★★★
(批評家 陣野俊史)
[日本経済新聞夕刊2016年12月8日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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