告白の余白 下村敦史著
京都人の「仮面性」キーに
碁盤の目になった京都の市街地図。その枡目(ますめ)に石を置いていくオセロ・ゲームのような小説だ。黒と白とのコマが交互に引っくり返され、二転三転、最後には……。
双子の兄の死の謎を追い、一途な青年が訪れるのは、京都は老舗の和菓子屋。兄と間違われたことを幸いに、探索をはじめるが。伝統ある「民芸」菓子に練りこまれ、はんなりと包まれたアンのように本音を隠す京言葉のトゲに立ち往生する。
京都人の独特の「仮面性」をキーにしたところが面白い。通好みの微妙な味わいというより、観光スポットの紹介や心理模様の親切な絵解きは、ビギナー向け。それも、京都人らしいオモテナシの手際ですな。
★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2016年12月8日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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