ラブ・ゲーム エリザベス・ウィルソン著
愛憎交錯するテニスの歴史
語源は「愛」のままでよいらしい。フィフティーン、ラブ。15-0。テニスの例のラブである。ま、諸説アリなのだが、この競技が闘争と競争のみならず「美的な広がりと創造性」を抱き、ゆえに愛情の対象であり続けることは確かだ。
文化史の書き手である著者はビクトリア朝から現代までのヒストリーを描きながら網羅にとどめない。階級、セクシャリティー、引退後の寂寥(せきりょう)……。愛憎の長き交錯と堆積は人類の歩みそのものでもある。一例、プロ化が進めばコート上では「速度、計測、パワー」が重視される。近代産業システムの「合言葉」とまるで同じだ。
時代背景と状況の解説が実に的確、教養と筆力はまるで揺るがぬ返球のごとし。
★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2016年12月1日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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