江戸を造った男 伊東潤著
幕閣の要人と材木商の交誼
本書は作者のデビュー10周年記念作品であり、それにふさわしい偉容(いよう)を誇る大作である。
材木商・河村屋七兵衛(後の瑞賢)は、明暦の大火で息子を失うが、それに怯(ひる)まず、木曾全山の木を買いつけに行く。さらに、保科正之に罹炎者たちの遺骸の処理を上申。ここから本来、あり得るはずのない幕閣の要人と一介の商人との意気に感じた交誼(こうぎ)がスタートする。
この他、七兵衛は、江戸に米を運ぶための海運路の開発、大坂は淀川の治水工事や越後高田藩の銀山開発等々、江戸期の様々な再建=インフラに携わる。
そして、この七兵衛の姿を見るにつけ、無理を無理ともせず確固たる作家的地位を築いて来た作者に重なってならないのだ。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年12月1日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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