働き方・学び方

イチからわかる

和食 なぜ外国でブーム?

日経プラスワン

2016/11/19付 日経プラスワン

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イチ子お姉さん 新米がおいしい秋ね。11月24日は「いいにほんしょく」とかけて和食の日。和食が世界遺産になって以来、世界的ブームだって知ってる?
からすけ 和食って毎日食べているご飯のこと? 世界遺産は神社や城だと思っていたけど、どうしてご飯が世界遺産になったのかな?

■健康的 世界遺産で注目

 イチ子 2013年に「日本人の伝統的な食文化」としてユネスコ(キーワード)無形文化遺産(世界遺産)になったの。季節に合った旬(しゅん)の食材を使って自然の美しさを表したり、正月のお節料理のように年中行事と結びついてずっと続いたりしている文化を評価したのよ。

<キーワード>
 ユネスコ 正式名称は国連教育科学文化機関。世界遺産委員会が毎年、候補の中から世界遺産へ登録する対象を決めている。
 発酵食品 微生物や酵素が食材を分解し、栄養や味、香りなどの成分を作り出した食品。みそやしょうゆ、チーズ、ヨーグルトなど。

 からすけ ご飯だけじゃないんだ。

 イチ子 もちろん、和食の栄養バランスがいいことは重要なポイントよ。一汁(いちじゅう)三菜(さんさい)という和食の基本メニューは、ご飯にみそ汁(しる)などの汁物を付け、魚や豆などのたんぱく質が入り、しょうゆやみそで味付けした野菜料理にはビタミン、ミネラルがふんだんなの。肉中心でパンを食べることが多い外国の食事よりも栄養バランスがいいといわれるわ。

 からすけ 昨日の夕ご飯はカレーライスだったよ。

 イチ子 健康的な和食文化を次の世代につないでいきたいけど、毎食、一汁三菜を準備するのは難しいわよね。カレーやグラタン、パンを食べたい日だってあるわ。だから和食文化を受け継ぐために学校給食が期待されているの。からすけは給食が変わっていると気づいたかしら?

 からすけ パンが出なくなった。ソーキそばやゴーヤチャンプルーとか、沖縄(おきなわ)料理の日なんてあるよ。

 イチ子 そうね。美食術が世界遺産になったフランスでは、毎年10月に「味覚の一週間」があるの。一流シェフが学校に来て、食材の見た目や香り、味、食感を意識して食べ、学ぶ授業が定着しているそうよ。日本でも料理人が学校で授業をして食について考えたり、給食の先生向けにメニューを提案して和食の献立(こんだて)を増やしたりする取り組みが広がりつつあるわ。

■日本酒・しょうゆ、輸出量最大

 からすけ 和食ってしょうゆ味だよね。

 イチ子 しょうゆは味付けに使う調味料の一つ。和食は昆布(こんぶ)やかつお節からしっかりとだしをとって使うことが重要なの。だしのうまみは他の調味料を加えるとおいしさが増す、和食では欠かせない味よ。1908年に日本人化学者が昆布に含まれるグルタミン酸を、13年にその弟子がかつお節に含まれるイノシン酸を、うまみ成分だと発見したわ。2000年には米国で「舌には甘みや苦みと同様、うまみを感じる細胞がある」と科学的に証明され、「umami」に世界が注目したの。

 からすけ へえ、すごい。

 イチ子 昆布とかつお節の組み合わせでうまみの相乗効果があることも分かったわ。発酵(こう)食品(キーワード)のしょうゆやみそなどの調味料にはうまみが凝(ぎょう)縮しているのよ。うまみがあればバターや塩を減らしても味に深みを出したり、コクを補ったりできるの。世界をけん引する料理人、フランス料理のジョエル・ロブションさんや、モダンスペイン料理のフェラン・アドリアさんらがだしや和の調味料を使って広めたわ。

 からすけ だしやしょうゆは和食以外にも合うんだ。

 イチ子 フランスでは9月に初めてかつお節工場が稼(か)働したわ。日本のかつお節の輸入が認められないので、現地に工場を建てかつお節を生産するの。米国では昆布やしょうゆなど日本の食材を使った「ウマミバーガー」というハンバーガーチェーンが人気で、今年中に日本に出店する予定なのよ。

 からすけ 和食ブームなんだね。

 イチ子 昨年のミラノ万博で日本館が注目を集めたわ。日本は先進国の中でも肥満が少なく、和食は健康的でおいしいと実感した人が多いんじゃないかしら。農林水産省によると、15年の食品や水産物の輸出額は過去最高だったそうよ。日本酒やしょうゆの輸出量も過去最多なの。企業が海外で販売ルートを広げたり、工場を造ったり。日本食レストランも増えているわ。

 からすけ 海外でもちゃんとした和食を食べられるのかな。

 イチ子 和食の基本知識がない店もあるわ。取り締(し)まることはできないけど、すしや懐(かい)石料理、すき焼きなどの店を中心に、旬の日本の野菜や果物などを使う店には認定マークをつける取り組みを始めたところよ。

 からすけ 確かに「ニセ日本食」が出回るとせっかくのブームが台無しになっちゃうかも。本当においしい和食が広がるといいね。

■「和食」の呼称、明治末期ごろ誕生

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 和食の典型である一汁三菜や、だしの手法が確立したのは室町時代頃(ごろ)と言われていますが、日本人がこうした料理を「和食」という言葉で認識し始めたのは明治末期~昭和初期頃でした。西洋の文物が多く輸入され、西洋風のものが一般的になるにつれて、「洋」に対する「和」が意識され始めたためです。それまで「和食」という言葉は「わじき」と読む四国の地名で、それ以外の意味はありませんでした。
 ちなみに、同じく明治時代より前に「和風」といえば「のどかな春風」の意味。また「和服」というと「争わず従う」という意味でした。元来「和」の字は「なごむ」「やわらぐ」「仲良くする」という意味を持っているからです。グローバル化により再び異文化との出合いが増えている昨今ですが、「和」食のブームがなごやかで友好的な国際交流のきっかけになればよいですね。

今週のニュースなテストの答え 問1=トランプ、問2=南スーダン

[日経プラスワン2016年11月19日付]

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