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ハレの外食 覚えておきたい食事マナー

2016/11/12付 日本経済新聞 プラスワン

■店や同席者への思いやり

 冬は会食が多い季節。格調の高い料亭やレストランに行く機会もあるもの。だが作法が分からず、困ったことはないだろうか。おしぼりで口を拭いたり、箸をなめたりなど、無意識のうちにやってしまうマナー違反もある。そこで専門家の協力を得て、和食と洋食のマナーについて質問を作成し、インターネットで調査。「知らない」と答えた数が多い順にランキングした。

 和食では、茶事から始まった懐石料理、お酒を楽しむ会席料理など由来によってそれぞれの作法がある。洋食では「スプーンやフォークなどの使い方がいまだによく分からない」(60代男性)という声が寄せられた。「マナーは店や同席した人への思いやり」とマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは言う。スマートに身につけて、せっかくのごちそうを楽しみたい。

 会席料理などで最初に3種類の前菜が一緒に出てくることがある。3種が横に並んでいる場合、食べる順番は左から、と覚えておこう。3種類以上ある場合も左から箸をつける。

 先付けに限らず、和食では器の真ん中から食べるのはマナー違反とされる。刺し身の盛り合わせや焼き魚なども同じだ。皿に3種類盛りつけてある場合は「左、右、真ん中の順番が基本。左に味が薄いものがくるように盛りつけられていることが多い」(岩下宣子さん)。どの前菜が左なのか迷った時は、淡泊そうな料理から食べよう。小さい器に盛りつけられている時は器を持って食べても構わない。

 会席料理などの最後にはご飯と止め椀(わん)、香の物が出てくる。「香の物から食べると、今までの食事がおいしくなかったというサインになる」(西出ひろ子さん)。まず汁物から口にすれば箸が湿り、後でご飯粒がくっつくのを防ぐことができる。その後は交互に食べ進めよう。香の物は「ご飯の上に載せて食べない」(蔦洋子さん)のもマナー。また、気をつけたいのは茶の湯の食事にルーツがある懐石料理。ご飯から箸をつけるのが基本的な作法とされている。

 茶わん蒸しはまず蓋の裏の水滴をこぼさないように気をつけて蓋を開ける。さじか箸を器に沿ってくるっと回し、中身をはがすようにしてから食べる。冷めて固まった時に中身が器に付いてしまうのを防ぎ、食後の見た目を美しくするためだ。かき混ぜて食べても構わない。食べ終わったら蓋は戻しておこう。

 刺し身の盛り合わせが載った大きな皿などを除き「手で持てる器は手で持って構わない」(西出さん)のが和食。汁椀や煮物のお椀、茶わん蒸しの蓋に食べ物を載せて口に運ぶのもマナー違反ではないという。食べ物をこぼさないように片手で受けるのは「手皿」といってNGなので気をつけよう。

■5位 ご飯をおかわりする時は一口残す(719人)

 「もとは懐石料理の作法とされている」(蔦さん)。食事が終わっていないことを表す、食べきるとご飯の量が足りないという意思表示になる、などの説がある。

■6位 握りずしは具を下にして口に入れる(689人)

 握りずしは具を下にしてしょうゆにつけ、口に入れる時も具を下にする。具を直接舌に感じることで、よりおいしく味わえる。

■7位 飲み終わった汁物のお椀の蓋は戻して奥に(687人)

 「食べ終わった後のお椀の蓋はどこに置いたらいいのか、いつも迷う」(40代女性)。蓋はお椀に戻し、膳の外側や奥に置けば、もう食べ終わったと伝わる。

■8位 すし店で「あがり」と注文しない(669人)

 「あがり(お茶)」や「ギョク(卵)」は店の符丁で、客は使わないのが礼儀だ。「おあいそ(会計)」も店側がへりくだって使う言葉なので、客が言うと失礼にあたる。

◇     ◇

 レストランで店の人に椅子を引いてもらって着席する場合は「左側に立って待つ」(西出さん)のがマナー。着席時だけではなく、席を外すのも左からだ。国際的な儀礼では、右が上位と考えられている。左から座るのは、「下位から入るのが礼儀」という考え方に基づいている。このほか腰の左側にさげた剣を椅子にぶつけないため、との説もある。ただし、左側のスペースが狭いケースや、壁側に沿ったテーブルなどで右からしか座れない場合は右からでも構わない。

 スープを食べる時、スプーンの使い方で迷う人は多い。「奥から手前でもいいとは知らなかった」(60代男性)。日本では「手前から奥」と覚えている人が多いが、実は国によって作法が違う。「手前から奥」は英国式で、フランスは「奥から手前」。スプーンを持っていない方の手を膝の上に置くのが英国式で、テーブルの上に出しておくのがフランス式だ。目印になるのがスプーンの置き方。「上向きだったら英国式、伏せていたらフランス式」(岩下さん)。英語やフランス語では「スープを食べる」と言う。

 かしこまったレストランでは1皿ごとにナイフやフォークなどを変える。外側から使うのが基本だ。店によっては同じナイフやフォークを使い続けることがあり、その場合は箸置きのような「レスト」に自分で戻す。「皿の上に置いたら持っていかれた」(50代女性)人もいた。

 店を出る時、きちんと折りたたんでしまうと「食事がまずかった」という意味になる。特に海外では気をつけたい。「欧米は右が上位なので、テーブルの左に置いて出る」(岩下さん)。また、ナプキンを広げるのは主賓や目上の人が広げてから。食事中に中座する場合は、椅子の上に置いておく。

■5位 コーヒーや紅茶のカップは両手で持たない(610人)

 コーヒーや紅茶のカップを両手で持つのは、洋食ではふさわしくない行為だ。「中がぬるいという意思表示になり、失礼に当たる」(西出さん)。片手で取っ手をつまむようにして飲むのが基本だ。持ちづらければ指を取っ手の中に入れても差し支えない。口をつける前にスプーンをカップの向こうに置き直すのが、飲み始めの合図になる。

◇     ◇

■知っておきたい懐紙の使い方

 和食店に行く時、懐紙を持参すると便利だ。懐に入れる二つ折りの和紙で、「口や器をぬぐったり、店の人に心付けとしてお金を包んだり、様々な場面で使える。日本人ならぜひ見直してほしい」と岩下さん。「手皿」はマナー違反だが、懐紙を使えば問題ない。他にも焼き魚の骨を外す時に頭をおさえたり、口元を隠したり。食べ残しを包む時にも良い。

 懐紙の折り方には注意が必要だ。半分に折る場合は、斜めに折る。上の部分を右下がりにするのがお祝い事で、左下がりに折るのは仏事や弔事の時。逆にならないよう意識しよう。

◇     ◇

 表の見方 数字は回答者数。

 調査の方法 マナーデザイナーの岩下宣子さん、日本フードアナリスト協会食空間マナー研究会顧問の蔦洋子さん、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんの協力を得て、和食と洋食のマナーについてそれぞれ23、20の質問を作成。10月中旬、ネット調査会社マクロミルを通じて全国40~60代の男女を対象に知っているかを聞き「知らなかった」と答えた人が多い順にランキング化した。有効回答数は1034(各世代とも男女同数)。

[日経プラスワン2016年11月12日付]

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