ワインに絶妙 おつまみ焼き菓子10選
前菜の代わりや手土産に
ワインがおいしい季節。塩気のある菓子はワインとの相性がいい。そこでチーズやハーブ、スパイスを使ったワインに合う焼き菓子を専門家に選んでもらった。
仏の洋菓子店、パティスリーには塩味の菓子がある。「塩味の小さな菓子」を意味する「プティ・フール・サレ」が代表格だ。食前酒に合わせたり、前菜代わりにしたり、昼下がりのワインのお供にしたり。サクサクした食感のパイのほか、甘みと塩味がともに味わえるクッキーやサブレにチーズやハーブが加わり、手土産にもつまみにもなる。
上位の多くは仏で修業を積んだシェフが手掛ける。「贈答用に甘くない菓子」「つまみになるもの」など客の要望で始めた店もあった。今回は軽めの赤ワインを想定したが、選者からはしっかりとした赤や辛口の白に合わせたいとの声もあった。
チーズとアンチョビーの味わい軽やか
小魚を塩漬け発酵後、オリーブ油に漬けたアンショワ(アンチョビー)をあしらったパイ。油を切ってからパイ生地で挟み、熟成したエダムチーズと塩を振って焼き上げる。サクサクした軽やかな食感で「チーズやアンチョビーの塩気、磯の香りが広がる一口アミューズのよう」(平岩理緒さん)。砂糖は使わず甘さはない。「塩気の強さが全体を引き締めており、ワインの華やかさをうまく演出してくれそう」(小沢英樹さん)
「古き懐かしきフランス」を意味する同店は2007年に開店。店主の木村成克さんが修業したフランスの店の味を再現し、開店以来の人気商品だ。「ビールや焼酎にも合う」と木村さん。「辛口白ワインにも合いそう」(遠藤誠さん)、「ホームパーティーの手土産に」(村瀬美幸さん)。
(1)7本、480円(2)http://www.lavieillefrance.jp/
鼻をくすぐる上質なトリュフの香り
香り高い冬の黒トリュフが採れる3月上旬までの期間限定。トリュフを生地に混ぜ、厚さ2ミリほどに焼きあげた。「ほろりと歯の間で崩れた瞬間、勢いよく広がるトリュフの香りに驚く」(瀬戸理恵子さん)。バニラの甘い香りがする「甘」と、パルミジャーノチーズを使った「辛」の2種ある。「食べる前から鼻をくすぐる上質なトリュフの香りはそれだけでワインをいただける」(下園昌江さん)、「ワイン好きへの手土産に」(肱岡香子さん)。東京・日本橋の「ヨネムラ ザ ストア」にはハーフ(4300円)もある。
(1)1缶200グラム(約60枚)、8500円(2)http://www.r-yonemura.jp/store/
甘じょっぱさとハーブの風味の深み
ローズマリーやバジル、マジョラム、タイムなど11種類のハーブを混ぜ込んだ甘じょっぱい味のサブレ。「徐々に広がる塩味とハーブの風味の深みがワインをより印象的にしてくれそう」(小沢さん)、「塩気はほどよく食感も軽く、フィンガーフードにぴったり」(大橋みちこさん)。店名は仏語で「分かち合い」。シェフの斎藤由季さんがお酒に合う菓子として、仏での経験を基に考案した。南仏産赤ワインはもちろん「若々しい味わいの白ワインと合わせたい」(宇多聡子さん)との声も。
(1)15枚、600円(2)http://www.patisserie-partage.com/
ほろっとした口当たり、しまる塩味
昔ながらの製法で作る長崎県平戸産の海水塩を使って焼き上げた。店名は「鳥は少しずつ巣を作る」という仏のことわざにちなみ、サブレの形でも表現。「甘い生地に塩を振りかけることで上品な味わい。ほろっとした口当たりの良さは、出来が良い年のブドウで作ったシャンパンなど少しリッチな1杯と合わせたい」(宇多さん)。「塩気と甘さのバランスがよい。後味の良い香ばしさやバターの風味は上品なブルゴーニュ地方の赤ワインに合いそう」(村瀬さん)。
(1)箱入り8袋セット(写真は2袋分)、1550円(2)http://atelier-petitapetit.com/
チーズやゴマが香ばしいパイ
北海道産バターと国産・仏産の小麦粉、塩で作るさっくりとした細身のパイ。エダムチーズ、アーモンド、白ゴマ、黒ゴマの4種セット。甘いものが苦手な人への手土産やビールなどのつまみに人気がある。「軽やかなパイ生地にチーズやゴマの香ばしさが合う」(下園さん)、「食べ応えがあるのに細く食べやすい。塩気も控えめ」(糸田麻里子さん)。
(1)1缶280グラム、2592円(2)https://mezoputi.com/
ワイン好きの店主、須崎優子さんがスティック状でつまみになるクッキーとして考案した。プレーン、ピンクペッパー、ジンジャーやシナモンなどのミックススパイスを使った5つの味でワンセット。「まずスパイスが香り、岩塩の塩気やうまみが追いかけてくる」(大橋さん)、「チリ産白ワインにも」(谷宣英さん)。
(1)10枚、400円(2)https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131601/13137428/dtlmap/
層が薄く、中まできつね色に焼いたバターの香り高いパイ。カリカリのグリュイエルチーズが載る。「チーズの香り、塩味、サクサク感が心地よい」(谷さん)、「チーズの香ばしさは重い赤ワインにも」(遠藤さん)。「ブドウの果皮や種を果汁と一緒に熟成させる今人気のオレンジワインと一緒に」(宇多さん)。
(1)50グラム、560円(2)http://www.ryoura.com/
エダムチーズと揚げたタマネギを生地に練り込んだ。厚みがあり食べ応えがある。「味が強く、甘さ、塩味、うまみもある」(谷さん)。「風味豊かでザクザクした食感」(大橋さん)。
(1)80グラム、496円(2)http://jun-honma.com/
鎌倉産と仏ゲランド塩を使う、かむとホロホロ崩れるソフトな食感のクッキー。バジルやゴーダチーズなど4種ある。「チーズの香ばしさやコク、ハーブの香りが心地よい」(下園さん)。
(1)1缶162グラム、1620円(2)http://lesanges.co.jp/
グリュイエルチーズや白ゴマなどをあしらった3種のスティックパイ。口当たりはサクッと軽く、溶けていく。「ふわっと浮き上がったパイの軽やかさが抜群」(瀬戸さん)。
(1)1缶170グラム、1944円(2)http://aubonvieuxtemps.jp/
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表の見方 数字は選者の評価を点数に換算した。商品名、店名。(1)内容量(数は目安)、税込み価格(送料別)(2)店のURL。
調査の方法 菓子やチーズ、ワインに詳しい専門家に取材し、チーズやハーブ、スパイスを使った塩味の菓子で全国発送が可能な26品を選定。11人の専門家が商品名と価格を伏せて試食し「軽めの赤ワインに合わせるのにおすすめ」との観点から評価した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
糸田麻里子(フードエディター)▽宇多聡子(「エル・ア・ターブル」エディター)▽遠藤誠(ワインバー「遠藤利三郎商店」オーナー)▽大橋みちこ(ワイン×料理研究家)▽小沢英樹(フードアナリスト)▽下園昌江(お菓子研究家)▽瀬戸理恵子(フードエディター)▽谷宣英(ホテルニューオータニ エグゼクティブシェフソムリエ)▽肱岡香子(フードスタイリスト)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽村瀬美幸(日本チーズアートフロマジェ協会理事)
[日経プラスワン2016年11月5日付]
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