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一度は訪ねたい!大学の名建築

 

2016/10/29付 日本経済新聞 プラスワン

■見学 サイト見て計画を

 大学の学園祭が週末ごとに各地で開かれ、キャンパスがにぎわう時期。大学の施設は街のシンボルにもなり、地元の人々に親しまれた建築物も多い。そこで一度は訪ねてみたい大学の名建築を専門家に聞いた。

 1位や2位など戦前に建てられた大学の建物には、ゴシック様式が多い。中世に欧州の教会で使われた様式で、大空に向かって高く伸びるかのような荘厳な姿が特徴的だ。ここ数年、こうした歴史的な名建築を最新技術を使って改修し、実用性を高める動きも広がっている。

 1960年代以降はコンクリートやガラスを用いたモダニズム建築が増えた。代表例が5位だ。近年では「風や光などキャンパスの環境を生かした建築物が目立つ」(建築ライターの磯達雄さん)。

 キャンパス見学は予約が必要な場合が多い。人気のツアーはすぐに予約が埋まってしまう。施設によっては講演会やコンサートが開かれることもある。学生の妨げにならない配慮も必要だ。事前にホームページで見学のルールやイベントの情報を確認しておこう。

1位 東京大学 安田講堂(東京都文京区)510ポイント
登録有形文化財、2014年に改修し往時の姿に

 後の総長、内田祥三が基本設計を行い、岸田日出刀らが仕上げた。正式名称は「東京大学 大講堂」で安田講堂の名は安田財閥創始者、安田善次郎の寄付で建てたことに由来。1968~69年の東大紛争では学生が占拠、機動隊が強制排除した事件でも知られる。「国家の威信をかけた帝国大学の象徴として建設され、戦後に至るまで時代の鏡ともいえる建築」(恒川和久さん)

 96年に国の登録有形文化財に指定された。2014年には全面改修し「建設当時の姿がよみがえった」(上野武さん)。講堂では講演会や有料の公開講座が行われることも。地下の食堂も利用できる。

(1)午前7時~午後6時、見学は外観のみ(2)内田祥三・岸田日出刀ほか、1925(3)地下鉄本郷三丁目駅から徒歩8分(4)http://www.u-tokyo.ac.jp/

2位 早稲田大学 大隈記念講堂(東京都新宿区)500ポイント
ホールの天井に太陽系模した採光窓

 大学を創立した大隈重信の没後に建てられた。「権威的ではなく、ゴシック様式に大正期の表現派を加味した名建築」(藤森照信さん)。大隈の「人生125歳説」にちなみ、時計塔の高さは125尺(約38メートル)。「時計塔とホールが温かい雰囲気を醸し出す」(今井公太郎さん)。楕円形の採光窓は「宇宙のように広い視野」の意味で太陽系を模した。07年の改修後、国の重要文化財に指定。講堂では演劇や講演会などを随時開催している。

(1)午前8時~午後10時30分、内部はツアーで見学(2)佐藤功一・佐藤武夫、1927(3)地下鉄早稲田駅から徒歩5分(4)https://www.waseda.jp/



3位 神戸女学院大学 岡田山キャンパス(兵庫県西宮市)380ポイント
校舎が囲む中庭、清閑で美しく

 米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの代表作。1933年に神戸から移転する際、キリスト教に基づく教育施設として設計した。校舎に囲まれた中庭が特徴的で「外国映画のように清閑で美しい」(大坪覚さん)、「外界と切り離されたよう」(花岡正樹さん)。12棟の建物は14年、重要文化財に指定。年数回の見学ツアーの予約はすぐ満員になる。

(1)ツアー限定(2)ヴォーリズ、1933(3)阪急電鉄門戸厄神駅から徒歩10分(4)https://www.kobe-c.ac.jp/

4位 公立はこだて未来大学(北海道函館市)370ポイント
5階分の吹き抜けで一体感

 設計者と教員が議論を重ね、2000年の開学に合わせて完成した。オープンな空間づくりを意識し、研究室や講義室は全て透明なガラス張り。「打ち放しのコンクリートと大ガラスに象徴されるモダニズム建築が良い」(藤森さん)。5階分を吹き抜けにした空間は「全ての活動が一望できる一体感を生んでいる」(恒川さん)。

(1)平日の午前9時~午後5時(2)山本理顕、2000(3)JR函館駅からバスで約45分(4)http://www.fun.ac.jp/

5位 名古屋大学 豊田講堂(名古屋市)350ポイント
軒の水平線・細い柱の対比にモダニズム

 左右非対称、コンクリート打放しの日本を代表するモダニズム建築。「軒の水平線と細い柱の対比が秀逸」(坂井猛さん)。「両側の広いピロティにモダニズムの特徴が現れている」(今井さん)。トヨタ自動車の寄付で建設、創業者にちなみ「とよだ」と読む。コンサートが開かれることも。

(1)午前9時~午後5時、外観のみ(2)槇文彦、1960(3)地下鉄名古屋大学駅徒歩1分(4)http://www.nagoya-u.ac.jp/

6位 武庫川女子大学 甲子園会館(兵庫県西宮市)

 「甲子園ホテル」として建設、東の帝国ホテルと並び称された。フランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤新が設計。「左右に延びる建物と2つの塔の構成が見事」(磯さん)。大学には建築学科があり「風格ある建物で建築を学べる」(大坪さん)。

(1)月に数日の見学可能日のみ、要電話予約(2)遠藤新、1930(3)JR甲子園口駅から徒歩10分(4)http://www.mukogawa-u.ac.jp/

7位 国際教養大学 中嶋記念図書館(秋田市)

 「図書のコロセウム」をコンセプトにした半円の建物で、秋田杉を豊富に使った。「屋根やインテリアも木を主体とし、環境と共生する時代の好例」(上野さん)。「海外の大学のように24時間使えるのは画期的」(斎藤健一さん)、「一般にも開放しているのがうれしい」(花岡さん)。

(1)平日は午前9時~午後10時(2)仙田満、2008(3)JR和田駅からバス15分(4)http://web.aiu.ac.jp/

8位 東京工業大学 博物館・百年記念館(東京都目黒区)

 かまぼこ形の筒がキューブ状の建物を貫く。周辺住民から「ガンダムのよう」と驚かれるなど「街に刺激を与えている」(五十嵐太郎さん)。「今にも動き出しそうな圧倒的存在感」(大坪さん)。

(1)平日の午前10時30分~午後4時30分(2)篠原一男、1987(3)東急大岡山駅徒歩1分(4)http://www.cent.titech.ac.jp/

9位 一橋大学 兼松講堂(東京都国立市)

 日本を代表するロマネスク建築。随所に龍や獅子などが見られる。

(1)学園祭などイベント参加時、外観のみ見学可(2)伊東忠太、1927(3)JR国立駅徒歩10分(4)http://hit-u.ac.jp/

10位 清泉女子大学 旧島津公爵邸(東京都品川区)

 コンドルが設計、洋画家の黒田清輝が内装を整えた。

(1)10月29、30日の学園祭で見学可能(2)コンドル、1915(3)JR五反田駅徒歩10分(4)http://www.seisen-u.ac.jp/

◇     ◇

 表の見方 数字は選者の評価を点数化。施設名、所在地(1)見学可能時間(2)設計者、竣工年(3)アクセス(4)問い合わせ先。1位の講堂内部写真は小川重雄氏提供、3、4、5位の写真は大学提供

 調査の方法 専門家の推薦を基にリストを作成。「建築物の美しさ」「文化財としての価値」などの観点で選んでもらった。大学教授は所属大学の建物を除いて評価。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。

 五十嵐太郎(東北大学大学院工学研究科教授)▽磯達雄(建築ライター)▽今井公太郎(東京大学生産技術研究所教授)▽上野武(千葉大学大学院工学研究科教授)▽大坪覚(『TOKYO大学博物館ガイド』著者)▽斎藤健一(「大学ジャーナル」編集部)▽坂井猛(九州大学大学院人間環境学府教授)▽恒川和久(名古屋大学大学院工学研究科准教授)▽花岡正樹(「ほとんど0円大学」編集長)▽藤森照信(建築史家)

[日経プラスワン2016年10月29日付]

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