幸せの値段 梅田みか著
淋しい中年男と猫の奇跡
「秋の光彩」の語り手大槻は塾の講師だ。以前はカリスマ講師として本やDVDを出したり、テレビにも出演したりした。だが、気がつくと仕事が減り、収入が減り、しかも脳卒中で倒れた父親の介護費用が重くのしかかっている。妻は半年前に出ていった。残されたのは妻が近くの空き地で拾ってきた猫だけだ。
そのまめきちがいないことに気づいて、大槻は探しに出る。可愛(かわい)がっていた猫ではない。度重なる悪戯に辟易(へきえき)し、目が覚めたらいなくなっていればいいと思ったことも一度ではない。でも実際そうなってみると思ってもいなかった感情がこみあげる。淋(さび)しいのだ。そして猫を探す中年男に、奇跡が訪れる。それがどんな奇跡かは本書を読まれたい。
★★★★
(文芸評論家 北上次郎)
[日本経済新聞夕刊2016年10月27日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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