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 「飲みニケーション」という言葉が職場に浸透して久しい。「飲み会」と「コミュニケーション」を掛けたこの言葉が示すように、社員相互の関係を深めるため、酒の席はよく使われる。その一方で若い世代が飲み会に参加したがらないとの指摘もある。飲み会を、快適で実のあるものにするため、何に気を付ければよいのだろう。
社内会議室での交流会で盛り上がる(松江市のモルツウェル)

社内会議室での交流会で盛り上がる(松江市のモルツウェル)

食品製造などのモルツウェル(松江市)。10月上旬のある日の午後7時すぎ、入社4年目の竹下伸也さん(27)が勢いよく立ち上がった。「さあ、行きますか!」。野津積社長も含めて同じフロアにいる人たちに声をかけると、6、7人で職場近くの焼肉屋へと連れ立って行った。

「飲みたいから飲むというより、コミュニケーションの一部としてとらえている。もちろん自分が飲みたくて誘うときもたまにはあるが」と笑う竹下さん。月2回程度、社内での飲み会を意識的に仕掛ける。さりげなく上司に提案したり、同僚や後輩の相談にのったりしている。おかげで風通しもよく、社内はいい雰囲気という。

2次会はしない

気を付けているポイントがいくつかある。まずオープンであることだ。仮に一部の人をこっそり誘って飲みに行ったとしよう。社内でその情報が誰の耳にどういう形で入るかわからない。そのときに「なぜ自分は誘われなかったのか」などと疑心暗鬼を生むようではマイナスだ。できるだけオープンに声をかけることが望ましい。

次に重要なのは参加を強制しないようにしていること、と竹下さん。社員それぞれに都合がある。参加したい人は参加し、参加できない人やしたくない人が断っても、後ろめたくならないようにしている。

飲み会の席で、アルコールを無理強いしないことも重要だ。アルコールが飲めない人、強くない人も含め、誰でも参加できるようにすることが基本だからだ。さらに野津社長も竹下さんも「2次会は基本的に開かない」と話す。確かに翌日の仕事を考えれば、遅い時間まで飲み会を引っ張るのは、望ましい姿とはいえないだろう。

負担を軽くするのも大切だ。同社では、できる限り歩いて行け、料金が高すぎない店を選んでいる。

費用については同僚となら割り勘が原則。社長や上司が同席すれば支払ってくれることもあるだろうが、いずれでも過度に財布に響いたり、遠くて行きにくかったりする会場では継続的な参加が難しくなる。これらを踏まえ、社内の会議室で簡単な交流会を開くこともある。気軽に参加できて社員にも好評という。

組織人事コンサルティング・人材育成を手掛ける人材研究所(東京・港)の曽和利光社長は、モルツウェルの事例と共通して、(1)強制しないこと(2)飲み過ぎないこと(3)短時間で終わらせる――をポイントに挙げる。

曽和社長は同時に「飲みニケーションは、本当は若い社員や新人社員こそ参加すべき」と強調した。経験の浅い若い社員が大きな仕事に挑戦するには、上司の賛同や応援がなければならない。フォーマルな会議でもの申すのは難しくても、飲み会の席なら無礼講になるため「これを生かさない手はない」。

翌朝の遅刻「最悪」

気を付けるべき点としては、上司がおごってくれる時に、「おごられて当然」との態度をとらないことだという。その場でももちろん、翌日にお礼のメールを送ると好感度が高い。最悪なのが、翌日朝に遅刻すること。社会人失格であり、信頼も失いかねない。むしろ飲み会の翌日は普段より早く出勤するくらいの心構えがおすすめだという。

とはいえ、飲み会だけが意思疎通の唯一絶対の解というわけではない。例えば、IT企業のウェブチップス(徳島市)は、週1回「おやつタイム」を設け、社員が集まってお菓子を囲んで休憩している。野原直一社長は「たわいないことでも会話が弾み、仕事がしやすい環境につながっている」と手応えを語る。

社内コミュニケーションや息抜きのための仕掛けが負担になり、本来の仕事に支障が出るようでは本末転倒だ。お互いに過度な負担がかからず、気軽に楽しめることを意識した工夫が欠かせないだろう。

(ライター 田中 輝美)

[日本経済新聞夕刊2016年10月24日付]

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