来福の家 温又柔著
3つの言語の間で揺れる
今年、第64回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した『台湾生まれ 日本語育ち』の作家の、原点を示す小説集。表題作以外に中篇(へん)「好去好来歌(こうきょこうらいか)」を収録。
この小説の主人公は、楊縁珠(ようえんじゅ)。台湾人の両親が日本に移住したことで、3歳から日本に住んでいる主人公は、じつにさまざまな場面で、台湾語・中国語と日本語の間で翻弄され、母親や祖母との関係に悩む。
流暢(りゅうちょう)ではない日本語しか話せなかった母親を恥ずかしく思い、「どうして、ママはふつうじゃないの?」と言い放つ場面は、読者の胸を打つ。移民と日本語文学の出会いを哀切に表現した小説でもある。
いま、最も活躍が期待される作家の出発を刻む佳品。
★★★★
(批評家 陣野俊史)
[日本経済新聞夕刊2016年10月20日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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