パードレはそこにいる(上・下) サンドローネ・ダツィエーリ著
読者にも乗り移るトラウマ
幼児期に誘拐され、10年以上監禁されていた体験を持つ男が、児童失踪事件の捜査に加わる。彼とコンビを組むのは、やはりトラウマを背負う女性刑事。
姿なき誘拐犯は実在するのか。それとも、「事件」は、すべて彼の強迫的な妄想にすぎないのか。その神経症が読者にも乗り移ってきて、息苦しい。
前半はサイコ・サスペンス。後半には、予測のつかない底深い展開が……。精神的「欠損」を物語に組みこむ巧妙さ、不安をかきたてるページ・ターナーの力技、緻密きわまりなく練り上げられたプロット。
どれをとっても極上だ。ジェフリー・ディーヴァーのイタリア版か。本家よりもはるかに脂ぎっている。
★★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2016年10月20日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。