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藤原竜也さん 蜷川への思い胸に『鱈々』で新境地

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NIKKEI STYLE

舞台に激しい闘志をみせる34歳。「今、僕と仕事すると面白いと思いますよ」と正面切ったものいいをした。韓国の現代演劇「鱈々(だらだら)」(30日まで、東京・天王洲 銀河劇場で上演中)の稽古場。柔らかい演技に細心の注意をはらう姿がそこにあった。言葉に嘘はないと感じたのは、まさに新しい世界に挑戦していたから。

倉庫に閉じこもり、単調な仕事に日々を費やすふたりの男の物語である。演じる男は箱を運ぶだけの仕事を指示通りこなすことに全身全霊をかける。ところが、相棒はいい加減にノルマをこなし、酒と女にうつつを抜かす。倉庫の密室空間にさざ波がたち、やがて鱈の頭をスープで煮る不思議なしじまが訪れる。韓国演劇界の著名作家、李康白(イ・ガンペク)の作。

スター役者だけに、引きこもりとも見える男はこれまでにない役柄だ。

「難しいけれど面白いです。シンプルで深い。間や音程やセリフへのリアクションで変化をつけ、濃密な演技にしないと」

今、自分が面白い。そう言える心には、暗いトンネルを抜け出た手ごたえが実はあった。

母と息子の禁断の愛を描いた「身毒丸」(寺山修司作)で鮮烈なデビューを果たしたのは、15歳の年。演出した蜷川幸雄は役者、藤原竜也の生みの親であり、育ての親でもあった。ことあるごとに大役をあてがわれてきた。ことし5月に亡くなったが、最後の最後でくわだてたのが「藤原竜也」の改造だった。

「大スランプに陥ってしまった。何をやっても否定される。どん底。1年半ほど大変な日々になった」

大きな世界を目指した蜷川演出は役者に異様な衝動や体をはった叫び声を求めた。その手法に純粋培養されただけに映像現場で注意されるほどクセがついた。蜷川は80歳を前に「製造責任がある」と言い、内面の心を見つめる繊細な演技を求め始めたのである。

15年1月に上演された「ハムレット」の稽古場。肺に水がたまった蜷川は車椅子に酸素ボンベを詰んで稽古に臨む。「演技の中身をつくれ」「言葉の内容を正確に伝えろ」

「20年一緒にやってきたのに、急に変えろといわれても」と戸惑った。動けなくなるほどダメを出され「ただ粛々とやるだけ」になる。最後は返事もしなくなった。「生と死をめぐるハムレットをやり遂げれば、すべてが変わる、発見があると思っていたが、実際は何もなかった」。虚を生きる役者人生の深淵を垣間見たか。

亡くなる前日まで見舞いに行けなかった。が、告別式の弔辞を読む数日前、公園でひとり「ハムレット」の稽古のテープを聞き返し、蜷川の声をかみしめた。「泥水に顔をつっこんで、もがいて苦しんで、どうしようもなくなったら手を挙げろ。その手をオレが引っぱってやる」

演劇の厳しさをこれだけ知るスター役者は今や少ない。今度の「鱈々」は蜷川が逝ってから初めて立つ舞台だった。これまでもたびたび向き合ってきた演出家・栗山民也には、全幅の信頼を寄せる。「ピュアな役者だ」とは、栗山の弁だ。

◇     ◇

入念な準備 稽古前から

演劇の師だった蜷川幸雄の稽古は、セットや演出意図の説明がすめば「よーい、どん」で始まる。演技の細部は役者が準備しておくべきこととされた。そのやり方が肌身にしみているから、舞台の稽古が始まる前にはきちんとセリフを覚え、入念に準備するのが習い性になった。

蜷川の稽古場を繰り返し取材してきたが、藤原竜也へのダメ出しは明らかに別次元だった。まるで子供を特訓する過酷な父親。愛があまりに深いため、時に憎悪に反転するのかとも見えた。最後の嵐のような稽古は、虎が我が子を千尋の谷に突き落とすようなものだっただろうか。

シェークスピアや井上ひさしの優れた作品に取り組んできた。「なぜ優れた戯曲が色あせないか。争いにしろ、愚かな行いにしろ、結局僕たちは同じところをぐるぐるまわっているだけなんだと思う」。演じることで、人間の変わらなさに気づいたという。挑戦したい劇作家として、唐十郎や清水邦夫の名を挙げた。

(編集委員 内田洋一)

[日本経済新聞夕刊2016年10月19日付]

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