ネクタイ、自分で手入れしタイ
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クールビズも終わりに近づき、ネクタイを久々に出してみたら何だか薄汚れている印象です。自宅でできるネクタイの手入れ方法やコツがあれば、教えてください。
つるさず平らに干す
夏の間、しまい込んでいたネクタイを久々に手に取って、汚れ具合に驚く人は少なくないだろう。胸元の目立つ場所に着用するものだけに、清潔感は不可欠。一方でクリーニングに出すと1本500円程度かかる。何とか自宅で洗うことはできないか。
インターネットで宅配クリーニングを展開するバスケット(東京・渋谷)の松村映子社長によると、ネクタイの汚れの主因は「手あかや食べこぼし、汗」。明るい光の下で見て色むらが出ていれば、汚れている証拠だ。シミが付いたネクタイは専門店に任せる方がよいが、そうでない汚れなら自宅洗いを試す手もある。
まずは素材を確認する。「丈夫でシワになりにくいポリエステルなら、家庭でも手入れ可能」(松村さん)。シルクのネクタイの水洗いはほぼ無理と思った方がよい。
使うのはおしゃれ着洗い用の中性洗剤と、セ氏30度前後のぬるま湯。目安は「手をつけてぬるく感じるくらい」(松村さん)だ。大きめの洗いおけに湯を張り、表示に従った分量の中性洗剤を使う。四つ折りにしたネクタイを洗濯用ネットに収め、洗浄液に静かに浸す。ゴシゴシこすったりもみ洗いをしたりせず、2分ほど優しく振り洗いする。
洗い終わったら1回すすぐ。温度の変化で生地に負担をかけないため、すすぎも洗うときと同じ温度に保ちたい。すすぎが終わったらネクタイを洗濯ネットから出し、二つ折りにして広げたバスタオルの上に形を整えながら置く。「子どもの体をふくように、軽くとんとんと水気を吸い取る」(松村さん)
セーターやニットを干すときに使う「平干しネット」を使い、ネクタイが地面と水平になるようにして陰干しする。表地でくるんだ芯地がしっかり乾くまで、平らに置いて乾かそう。ここで重要なのが、つるさないこと。ネクタイが伸びてしまうからだ。形崩れを起こさないことが大事なので、脱水も厳禁だ。
ソースや飲み物のシミなどは「こすると逆に染み込む恐れがある」(松村さん)ので、原因を特定して専門店に持ち込みたい。カビが生えた場合は「特殊溶剤で除去してもカビの部分の繊維が壊れて色落ちや穴あきに見える」ためあきらめた方が良いそうだ。
ネクタイは熱や湿度の変化、光に弱い。なるべく暗く湿度の低い場所に保管したい。長期保管時も定期的に換気して、湿度がこもらないように心がけよう。
着用後、即しまわない
お気に入りのネクタイは少しでも長く愛用したいもの。常時約2千本のネクタイをそろえる三越伊勢丹の伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)でワイシャツ・ネクタイスタイリストを務める花野友彦さんによると、毎日のちょっとした気遣いでネクタイは良い状態を保てるという。
心がけてほしいのは「着用したネクタイは汗を乾かしてからしまう」こと。外してそのまま収納すると生地が傷みやすい。花野さんは「帰宅後すぐにネクタイを外して干し、寝る前にしまう」という。
保管方法にもコツがある。花野さんは半分折りにしたネクタイをふんわり丸めた状態で、引き出しに並べて収納する。つるしてしまうと、大剣と呼ばれる幅の広い方の布の重さで、ネクタイが伸びてしまう恐れがあるからだ。直径7センチから8センチを目安に丸めるのがベスト。半分に折った平置きの状態も、ネクタイにストレスがかかりにくくおすすめという。
シワが気になってきたら、シワ部分に当て布を置き、アイロンでネクタイを押さえつけないようにスチームをあてる。大剣の形を整える場合は、ネクタイを裏返して折り目に沿って箸を差し込み、同様に当て布を使ってスチームをあてる。丸い箸を使えばふんわりと、断面が四角い箸だと折り目の角を出すこともできる。贈り物になることも多いネクタイ。思い出とともに大切に使いたい。
(南優子)