卓球アンソロジー 田辺武夫著
古今の心の奥に触れる言葉
本当に思ったことだけを端正に書く。根底に静かで熱い使命感がある。つまり、よき文章。卓球サークルの外の読者にとっては「知られざる名文家」発見の喜びもかさなる。
かつて早稲田大学卓球部主将にして高校の元国語科教員が、小説に詩に随筆に映画、卓球にまつわる古今の表現から心の奥に触れる言葉を引く。
アナーキストの大杉栄は作家の吉屋信子とピンポン台に対峙していた。拉致被害者の蓮池薫は平壌でのテレビ観戦の記憶を冊子連載に記す。日本初の卓球人が夏目漱石との仮説は著者による日記精読から。
「ゴムと、汗と、木の香りが合わさって、やる気が起きてくる」。小学五年生がラケットを作文にした一節だ。
★★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2016年10月13日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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