地上の星 村木嵐著
「日葡辞書」完成巡る群像劇
豊臣秀吉が天下統一を成し遂げようとしていた頃。島原では天草五人衆といわれる領主らが不毛な争いを繰り返していた。
大友氏が治める豊後では既に耶蘇会(やそかい)が布教を行っており、作品はその手伝いをする、おせん・小六の夫婦、天草鎮尚の一人娘お京、五十数年の歳月をかけて『日葡(ポルトガル)辞書』を完成させる兜巾(ときん)らの群像劇として描かれる。
そして作品のクライマックス、男まさりの美姫(びき)お京は戦場に打って出るが、おせんに小西行長なら『日葡辞書』を守ってくれるだろうと、これを託す。作中には何度も言葉の持つ温(ぬく)もりのことが語られ、言葉こそ人と人との絆であり、平和への道程であることが示される。身の引きしまる傑作だ。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年10月13日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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