武器としての人口減社会　村上由美子著

実に巧みな書名である。

まず、本書の素晴らしさはデータの編集がしっかりしているところにある。例えば日本の中高年層の「読解力」や「数的思考力」はフィンランドと並んで世界の最高水準にあることが示されているが、それは日本企業の人的資源管理が優れていることの証（あかし）である。あるいは「新興技術分野のトッププレーヤー」のグラフをみると、中間財（素材や部品）やデバイス類で日本はダントツの開発力を有していることが明らかだ。

著者の日本の雇用制度に関するステレオタイプの理解や、超エリートとしての自身の体験を一般化する記述には若干の違和感があるが、女性の社会進出への制度整備論などよくわかる。

★★★★

（福山大学教授　中沢孝夫）

［日本経済新聞夕刊2016年9月29日付］