生か、死か マイケル・ロボサム著
サスペンスの内実は純愛
現金輸送車強盗の唯一の生き残り犯が、出所前夜に脱獄する。巨額の強奪金は消え、事件は未解決のままだった。彼は何を求め、どこへ行くのか。
逃亡の道行きもさることながら、巻き戻されてくる彼の過去の物語が鮮烈だ。生か、死か。綱渡りの連続。頭部に致命傷を受けるが、奇跡的に生き延び、刑務所では何度も命を狙われる。生と死のブランコを超然とやり過ごす男。だが、彼にも、夢にその名を求める女がいた。
仕掛けはサスペンス。その内実は、ひとつの純愛物語。
超人的にみえる主人公も、ごくありきたりの青年なのだ、と作者は納得させる。彼の巻きこまれた状況は「最悪」だが、切り抜ける力を与えたのは「愛」だった。
★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2016年9月29日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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