肌が乾燥 手入れしてるのに
スキンケアは洗顔からと思い、朝晩しっかり洗顔し、日々のお手入れにも気を使っているのですが、それでも肌が乾燥しがちです。冷房の効いた室内にいることが多いのですが、そのせいでしょうか。
ダブル洗顔・熱い湯NG
スキンケアのためにしっかり洗顔する人は多い。油溶性のクレンジング剤でメークを落とした後に水溶性の洗顔料で洗うダブル洗顔派もいる。しかし生活美容ジャーナリストの山岸敦子さんは「洗いすぎこそ、肌が乾燥する原因」と話す。長年美容業界で取材をしてきた山岸さんはお薦めの化粧品についてよく相談を受けるが、化粧品よりクレンジングの方法が問題という。
美容皮膚科や形成外科が専門のクリニックモリ(東京・港)の森文子院長も「薄化粧なら洗顔料だけの洗顔でいい」という。例えばBBクリームにパウダーファンデーションで、その後化粧直しをしないなら「夕方には皮脂で十分化粧は浮き上がっているから、洗顔料だけで汚れは落とせる」。しかも、朝の洗顔は水やぬるま湯だけで構わないという。「38度が洗顔に適した温度の目安」
ではなぜ肌が乾燥するのか。皮脂膜に覆われた下には角質層(角層)、有棘(きょく)層、基底層などの表皮がある。一番上の角層は死んだ細胞が堆積したもので、その厚さわずか0.02ミリ。角層をレンガ塀に例えると、レンガは角層細胞、間を埋めるセメントが細胞間脂質だ。細胞間脂質にはセラミドという水分子と結合する脂質が存在し、体内からわき出る水分をがっちり保持している。
よしき皮膚科クリニック銀座(東京・中央)の吉木伸子院長によれば「肌の水分の80%をセラミドが担う」という。潤いのある健康な肌の水分量は20~30%。角層の水分量がそれよりも低下した状態を乾燥肌という。セラミドは年齢とともに減るのだが、さらに強すぎる洗顔やクレンジングによっても流出してしまう。これが乾燥の原因だ。
保湿美容液1つで十分
肌の乾燥について常在菌バランスからアプローチするのが東京女子医科大学東医療センターの出来尾格講師だ。角層の隙間には善玉の表皮ブドウ球菌と悪玉の黄色ブドウ球菌がいる。前者はグリセリンなどの保湿物質を分泌し、悪玉菌を退治する抗菌ペプチドを作り出すという。「洗顔で角層細胞がはがれると善玉菌まで減る。これが悪玉菌を増やす結果になり、肌荒れにつながる」。洗顔で菌数は70%減り、元に戻るのに12時間ほど要するという。
乾燥を防ぐには角層をできるだけはがさない洗顔法が肝になる。そのためには泡立てた洗顔料を皮脂分泌の多いTゾーンに載せササッと洗う。「念入りに洗う必要は全くない。泡を長く肌にとどめるのも避けるべき」(森さん)
しっかりメークした場合はクレンジング剤が必要になる。山岸さんはたっぷりのミルククレンジングを顔に広げ、40度くらいのやや熱めの湯に浸して絞ったホットタオルを顔に押し当てる。汚れをタオルに移す感覚で優しくぬぐったら、後はぬるま湯で流すだけだ。クレンジング剤は量が少ないと摩擦が起きやすい。タオルでも強くこすらないよう注意する。
クレンジング剤は洗浄力が強いので選び方が重要だ。吉木医師が薦めるのはクリームや乳化ジェルなど油分と水分のバランスが良いもので「歯磨き粉くらいの固さがある方が肌を直接こすらずに済む」。安くても肌トラブルが少ない洗顔せっけんと違い、千円以下の安いものは避けた方がいい。
洗顔後のスキンケアも気になるところだが「化粧水は必要ない」と吉木さん。バシャバシャとたたき込んでも蒸発してしまい、長時間水分を維持できるわけではない。「むしろ必要なのはセラミドや疑似セラミド、レシチンなど水分と結合する成分を配合する保湿美容液」。洗顔で流出したセラミドを補う美容液1つで保湿は十分という。
正しい洗顔法は一つではない。「その日の肌のコンディションや汗のかき具合、化粧の仕方などに応じて臨機応変でいい」と森さん。それでも乾燥するようなら、化粧品に頼る前に「マスクをして寝たり、加湿器で外的環境を変えてみたりして」と助言する。
(福沢淳子)
[日経プラスワン2016年9月17日付]
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