刑罰0号 西條奈加著
人間心理の複雑さ浮き彫り
理不尽で無惨(むざん)な事件報道を目にするたびに、被害者の身になってみろ、と加害者に言いたくなる。その原初的な気持ちを体現したかのような技術が、本書に登場する「0号」だ。
その実態は、ヒトの記憶を抽出し、他人の脳内で再生するシステム。なんだかヒトの脳がPCみたいに捉えられている発想だが、本書では、この技術を殺人事件の加害者に科す。いわば「目には目を」の刑罰だが、もちろん一筋縄ではいかない。
0号が発明されるに至った事件と犯人たちの刑罰の結果を描いた表題作ほか、全7篇(へん)から成るオムニバス短編集。国際的なテロ事件にまで拡(ひろ)げた視点は、ヒトの心理や社会情勢の複雑さを浮かび上がらせ、読み応え充分(じゅうぶん)だ。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2016年9月15日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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