ドナ・ビボラの爪(上・下) 宮本昌孝著
まったく新しい信長物語
読者諸氏は、ドナ・ビボラという人物を御存じだろうか。
本書は、宮本昌孝のまったく新しい信長物語にして、戦国伝奇小説の傑作。今年のベスト10を狙える堂々の大作である。
濃州(のうしゅう)大洪水の真っ只(ただ)中に生まれた斎藤道三の子は願いに反して女子(おなご)、帰蝶(きちょう)。加えて道三そっくりの不容色。だが、信長と出会い劇的な愛情で結ばれる。
しかし、本書のテーマが明らかになってくるのは、このあたりからで、冒頭の大洪水が伏線となっているように、納得のいかない人生を送らねばならなかった人々の不条理劇でもある。
そして非業に死んだ帰蝶の代わりに現れたドナ・ビボラの正体は最後の最後まで分からない。大胆な発想と巧緻な技法が冴(さ)えわたる絶品だ。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年9月15日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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