原爆ドーム 頴原澄子著
遺跡になる経緯 多角的に
広島では、原爆の爆心地に、旧物産陳列館の建物が廃墟(はいきょ)のままたもたれている。くずれきらずに、かつての輪奐(りんかん)をとどめてきた。原爆ドームと称され、原爆の災禍をしのぶ遺跡に、今はなっている。いわゆる世界遺産にも、えらばれた。
しかし、はじめからその記念性が、ひろくみとめられていたわけではない。敗戦後しばらくのあいだは、その保存にあらがう声も、しばしばとびかった。目ざわりだからこわせという意見も、なかったわけではない。
この本は、そんな建物が原爆遺跡として公認されるまでの経緯を、おいかける。その過程で、さまざまな戦後の思惑がかかわったことを、あぶりだす。エポキシ樹脂の大量注入には、考えさせられた。
★★★★
(風俗史家 井上章一)
[日本経済新聞夕刊2016年9月8日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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