不機嫌な姫とブルックナー団 高原英理著
垢抜けない天才を面白く
ゴシック文学研究者として名高い著者によるエンタメ小説。極上と言える面白さが光る。
図書館に勤める「ゆたき」はブルックナーを偏愛するアラサー女子。あるコンサート会場で、「ブルックナー団」を名乗るオタク3人組に声をかけられる。
小説の構造は、ゆたきの作曲家への思いと、「ブルックナー団」の一人、武田による「ブルックナー伝(未完)」が交互に記述される形になっている。
著者の真の狙いは、同時代人の作曲家(たとえばブラームス)と比較してもどこか垢抜(あかぬ)けない、だがどう考えても天才としか形容できない奇人ブルックナーの生涯を、平易に面白く語り直すことにある、とみた。
生きるのが下手な人たちへのエールでもある。
★★★★
(批評家 陣野俊史)
[日本経済新聞夕刊2016年9月1日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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