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環境の味方、歌うエコ仮面 緑色のなりきりヒーロー 平田彰宏、共栄設備工業所社長

2016/8/31付 日本経済新聞 朝刊

小学校の音楽室で自作のエコ楽曲を歌う平田彰宏さん

 「♪タバコの吸い殻 空き缶の ポイ捨て大キライ~~」

 大阪府内の小学校に招かれ、音楽室でライブを開く。緑のコスチュームに赤いマフラーをたなびかせ、ギターをかき鳴らしながら自作の「エコ仮面のうた」を熱唱すると、子どもは拍手喝采。「オマエら、電気消せよ!」の呼びかけに、「はーい!」と威勢良く答える。

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■家業のPRきっかけ

 環境保護をテーマに歌を作って16年になる。「エコ仮面」を名のり、小学校や地域の催しで披露してきた。未来を担う子どもたちが環境に興味を持つことを祈りながら。

 もっとも、昔から環境保護に熱心だったわけではない。実のところ、最初は下心だった。

 大阪府寝屋川市で上下水道の設備会社を営んでいる。戦後の貧しい時代に父が井戸を掘るところから始めた事業だ。私が28歳のとき母がくも膜下出血で急死。意気消沈する父を継いだ。

 そのころ、規制緩和で市の公認業者は10倍にふくれあがっていた。このままでは立ちゆかない、と危機感を抱き、頭をひねった。「愛される会社になるには、清掃や!」。翌日から毎朝、社名入りジャンパーを着て、会社の前を流れる寝屋川沿いの道でゴミを拾った。数カ月たつと本気で環境について考えるようになったから不思議だ。

 ある朝、ゴミ拾いする傍らで、信号待ちの車のドアが開き、吸い殻がドサッと投げ捨てられた。さすがに頭にきて注意すると口論に発展。怒りがこみ上げたが、後続車のクラクションで我に返った。ケンカではアカン。ポイ捨てする悪い大人をやっつける方法を考えたろ。

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■「自然にカエル」訴え

 とっさに思いついたのが歌だった。松山千春や長渕剛に憧れた高校時代、深夜までギターを弾いた。大学では仲間とバンドを結成して、作詞・作曲・ボーカルを担当。社会を風刺する曲をたくさん作った。就職して音楽から離れていたが、すぐに感覚を取り戻した。

 記念すべき第一作は「エコのうた」。明るい曲調で、「使った油は 流しちゃダメです 石鹸(せっけん)つくりましょう」などと歌う。子ども2人のユニットでボーカルは小学1年の娘。5歳の息子は「エコ、エコ、エコ」と合いの手を入れる。手応えがあった。テープを市区町村に送ると、30近い出演依頼が舞い込んだ。子どもを連れ各地へ出かけた。

 ところが数年たつと娘が「恥ずかしい」と出演を渋るようになった。それなら自分でやったる、と覚悟を決めた。ゴミや汚染の暗いイメージを払拭する、環境を守るめちゃくちゃかっこいいヒーローになろう。小さいころ夢中になった「仮面ライダー」を思い出しながら、構想を練った。

 友達に衣装制作店を紹介してもらい、特注した。衣装は自然にかえるとの意味をこめて、カエルのモチーフにした。全身緑色で、ヘルメットはカエルの顔、胸元に白で「自然」の文字。オチで、股間部分に「!」を付けた。

 曲は次々に仕上がった。戦隊ヒーロー番組のテーマソングをイメージした「エコ仮面のうた」をはじめ、アイドル風、バラード、民謡調など。色々な所から声がかかり、月4、5回はエコ仮面に変身して歌う。

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■東京五輪で披露が夢

 小学校なら、音楽室をライブハウスに変える。「イエーイ!」と声を張り上げて登場すると、生徒もハイテンションでノってくれる。そこですかさず、それぞれの美化目標を宣言してもらう。「頼むで、オマエらが学校守んねんで!」と念押しして立ち去ろうとしても、「サインちょうだい」と袖をつかんでなかなか帰してもらえない。

 大事なのは、大人が本気になることだ。おもねってはいけないし、ましてや「ゆるキャラ」には絶対にならない。世界観を作り込み、ヒーローを演じる。私が行くとゴミが減り、電気や水道のつけっ放し、出しっ放しがなくなると先生方は言う。子どもは柔軟で吸収が速いから、いま学んだことは大人になっても続けてくれるだろう。

 緑の衣装で走り回っているから、「あそこの水道屋つぶれるで」と冗談半分に噂されることもあった。しかし、府や市、社会貢献支援財団などから表彰されると反応も変わった。もちろん今も、朝の清掃は欠かさない。

 最新作「エコ音頭」は、日本をエコで一つにしたいという思いを込めた。1960年代に三波春夫が手がけた「東京五輪音頭」を念頭に置いている。夢は4年後の東京五輪で歌うことだ。さあ、ご一緒に。「♪ソ~レ、日本全国、エコ音頭~」

(ひらた・あきひろ=共栄設備工業所社長)

[日本経済新聞朝刊2016年8月31日付]

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