浴室鏡のしつこい水あかに苦戦
浴室の鏡に白いウロコ状の汚れがびっしり付いてしまい、何も映りません。このウロコ、洗剤をつけてもこすってもなかなか落ちないのです。どうすればきれいになりますか。
磨く前にクエン酸パック
最初はピカピカだったのに、いつの間にか白いウロコのような輪じみに覆われ、何も見えない状態に。そんな浴室の鏡汚れに悩む人は多い。
TОTО総合研究所素材研究部の園川沙織さんによると「輪じみの正体は水あか」。体や髪を洗う際、水滴が鏡に飛び散る。入浴後もそのままにしておくと「水分は蒸発するが、水滴中のミネラル成分が鏡に残る」という。
水あかはぬれる、乾くを繰り返すうち、少しずつ鏡に堆積し厚みを増していく。「ごく初期の水あかなら、中性洗剤をスポンジに取り、こすり洗いすれば落とせる」(園川さん)。しかし厚みが増すほど落としにくくなっていく。くっきり目立つようになったら、もはやスポンジでこすったぐらいでは取り除けない。
なぜ水あかは落としにくいのか。園川さんは「硬い上に、鏡と化学的に結合する性質があるから」と説明する。水あかの主成分は水道水由来の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカだ。「特にシリカは、鏡の素材であるガラスと同じケイ酸が結合してできた物質なので、鏡に固着しやすい」という。こびりついて取れない水あかは、シリカが主な原因だ。
成分によって対策は違ってくる。ダスキン クリーン・ケア開発本部の滝本敬太郎さんは「炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムは酸に溶けやすいので、弱酸性の洗剤が効果的」と話す。一方、シリカは酸に強く「研磨して物理的に落とす必要がある」。
ただ、強い力でこすりすぎると鏡を傷つける恐れがある。「まずはマイルドな洗剤や道具を使い、それでも落ちない場合はもう少し強いものを使ってみる。材質に影響がないかチェックしつつ段階的に手入れするのが失敗を防ぐコツ」(滝本さん)
NPО法人 日本ハウスクリーニング協会指導員の佐藤嘉浩さんは、ナチュラルなクエン酸水の活用を薦める。水400ミリリットルにクエン酸大さじ2を溶かし、水あかに吹き付ける。スポンジ裏のザラザラした不織布面を水でぬらして磨く。
磨く前に、クエン酸水を鏡にスプレーしてラップを貼り付け、1~2時間パックするのもいい。「密閉して蒸らせば、クエン酸水が乾かない。酸を長時間効かすことができる」(佐藤さん)。ちなみに酸性の洗剤は、カビ取り剤や漂白剤など塩素系のものと一緒に使用しないこと。有毒ガスが発生するので危険だ。
最後の手段は研磨剤
それでも取れない水あかには、研磨剤入りクリームクレンザーを。滝本さんお薦めの磨き道具はジーンズの切れ端だ。「スポンジはクレンザーを吸収してしまう。ジーンズ生地なら硬く目が詰まっているので、研磨剤と汚れをこすり合わせやすい」
クレンザーでも落ちない場合は、最終手段としてダイヤモンドパッドで削り取る手がある。スポンジに人工ダイヤモンドを配合した強力な研磨剤で、水をつけてこするだけで頑固な水あかが取れるという。クエン酸水をスプレーしてから研磨するのもいい。「酸+研磨のダブル効果が期待できる」(佐藤さん)
ダイヤモンドパッドを使う際は「鏡も本体もたっぷりぬらしてから磨くのが鉄則。水分が少ないと傷がつく」と佐藤さんは忠告する。研磨面を鏡にぴったり密着させ、優しい力で平行にこするなど使い方には注意が必要。曇り止めなど特殊加工された鏡には使えないことも覚えておこう。
すべてのお手入れに共通するのは、鏡をよくぬらした状態で行うことと、最後に洗い流してから水滴をよく拭き取ること。ここで水滴を残してしまうと、苦労して落とした水あかが復活する。「そもそも入浴後に、スクイジーや吸水性のよいクロスで水滴をきれいに拭き取れば、水あかは予防できる」(園川さん)。毎日の習慣として、ぜひ取り入れよう。
(ライター 松田 亜希子)
[日経プラスワン2016年8月27日付]
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