札幌キャンパスはごく一部 北大は東京23区より広い
校有地の総面積660平方キロ 道北などに研究林
札幌駅の北に広がる北海道大学の札幌キャンパスを初めて訪れた人は一様にその広さに驚かされる。敷地面積は東京ドーム38個分。キャンパス内には広大な農場も2カ所ある。広すぎて、移動手段に自転車を使う学生も多い。だが、北大の持つ土地の広さはこんなものではない。校有地に占める札幌キャンパスの割合はたった0.3%なのだ。
北大の土地の総面積は660平方キロメートルで、東京23区(625平方キロメートル)を上回る。全国700を超える大学が保有する全ての校地のうち、実に43%が北大だ。
どこにそれだけ大きな土地があるのか。実は校有地の98%は明治・大正期に創設した研究林だ。苫小牧市や和歌山県内などにもあるが、とくに広い3つの研究林は道北に集中している。
その一つである雨龍研究林は幌加内町の人造湖、朱鞠内湖の周辺に広がっていた。各研究林には常駐の教員がいる。その1人、大学院環境科学院の内海俊介准教授は広大な雨龍研究林で昆虫の生態を調べている。最近は急速な気候変動に、昆虫がいかに適応しているかを研究している。
大学が保有する研究林は研究以外の目的では使われない。「第三者の手が入らない広大な森林は、長期にわたる動植物の研究には極めて有効」(内海准教授)。北大では農学や生物学の学生の実習の場としても研究林を使っている。今夏は他大学の学生も対象にした、フィールドトレーニングも実施している。
明治・大正期に広大な山林を大学が取得したのは、重要性が高まっていた造林など林業関連の演習の場所が必要だったためとされている。当時は研究林内の木材の伐採、販売でも多額の収入があった。札幌キャンパスにある現在の総合博物館の建物は、昭和初期に研究林の木材を売って得た収入で作られた。
かつて大学財政を支えた研究林だが、広大さゆえ、維持・管理の負担も大きい。雨龍研究林には非常勤を含め、12人のスタッフがいるが、林道の整備などにはギリギリの体制という。
長期の継続した研究が可能な研究林は全国の大学にはない北大らしさともいえる部分だ。国からの運営費交付金が減らされるなか、研究を支える資産をいかに維持していくかも、今後の北大の課題だ。
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