柴咲コウさん カバーアルバム「続こううたう」発表
憂いの15曲 大人の湿り気
女優で歌手。どちらも実力は折り紙つきの人だ。カバーアルバムの第2弾「続こううたう」を、このほど発表した。昨年に出した前作は「少女っぽい」歌を中心に選曲し「若さやフレッシュさ」で歌ったが、今作は趣を変える。ELLISの「千の夜と一つの朝」や高橋真梨子の「遥(はる)かな人へ」など、大人の憂いを帯びた曲を中心に収録。「今の私を表現できた。思い入れのある一枚」と話す。
背景にあるのは、この1年の自身の心境の変化だ。「年齢的に余裕が出て知恵もつけて、でも孤独で。いろんな意味で大人の心が分かってきた」。続編の企画が持ち上がり「歌いたい曲」を選んだ時、複雑な心象風景を描いた歌が心に留まった。「迷って悩みながらも挑んで生きている感じ」に共感した15曲を選曲。「人の悲しみに寄り添い、そっと肯定できる作品にできたら」と制作に励んだ。
レコーディングでは、透き通る歌声に「大人の湿り気」がにじむよう工夫。編曲にもアイデアを出し、原曲を生かしながら作品の方向性に合うと感じたサウンドを取り入れて新味を加えた。心残りは、主演する来年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の撮影が夏に始まり、ライブで今作の曲を歌えないこと。「友人のライブを見ていて飛び入りで参加したくなるぐらい、めちゃくちゃ歌いたい」ともどかしそうに語る。
女優業と同じくらい音楽を愛している証しだ。「音楽活動は心の衛生上、なくてはならない場所。自分を自由に表現できる場があるのは気持ちいい。(女優として)評価ばかりを気にしていたら(芸能活動を)辞めるかもしれない」。将来的には「出版や映像もやれれば」と瞳を輝かせた。
[日本経済新聞夕刊2016年8月10日付]
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