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ブレイク! 静かなヒット

国立能楽堂、身近なテーマの公演 外国人客も取り込む

2016/8/10付 日本経済新聞 夕刊

「復興と文化」の第4弾として大槻文蔵(左)がシテを勤めた「名取ノ老女」。好評を受けて今秋には名取市での再演が決まっている。

 人々の身近なテーマに添った能や狂言を選んで上演する東京・国立能楽堂の企画公演が盛況だ。今年度に入って開かれた6公演はいずれも完売。能狂言ファン以外の観客や、外国人客も取り込んで人気を集めている。

 2010年にスタートした人気シリーズ「働く貴方(あなた)に贈る」では、無断で休みをとった太郎冠者を主人らが呼び出そうとする狂言「呼声」や、偽物の仏像職人が田舎者をだまそうとする狂言「仏師」などを上演。昨年8月の公演では宝生流宗家の宝生和英が能楽評論家の金子直樹と対談し、普段は聞けない「家元業」の話を披露した。

 開演時間は通常より遅めの午後7時に設定し、仕事帰りの「働く人」が来場しやすい工夫もしている。

 他に、絵画に影響を与えた能を、その絵画とともに紹介する「近代絵画と能」、演芸作品の題材になった能をとりあげる「狂言と落語・講談」、東日本大震災を機に始まった「復興と文化」などのシリーズがある。今年3月には、被災地の宮城県名取市にゆかりのある能の廃絶曲「名取ノ老女」を復曲した。来年3月には東北にまつわる能「阿古屋松」を上演予定だ。

 同能楽堂は1983年の開場以来、名作を順次上演する定例公演を原則月2回、解説付きで親しみやすい演目を選ぶ普及公演を同1回開いてきた。これらが軌道にのった91年、他の文化ジャンルのファンにも客層を広げようとの狙いで企画公演が始まった。

 今年で25年。「世の中の流れを意識した変化球を織り交ぜながら地道に続けるうち、じわじわと客層が広がってきた」と諸貫洋次・企画制作係長は話す。認知度が少しずつ上がり、6年ほど前から年に十数回ある公演のうち完売する回が増えた。昨年度は17公演中16公演が完売した。

 最近は、外国人の増加もチケットの売れ行きに貢献している。今年6月には「外国人のための能楽鑑賞教室」を初めて開催。英語による解説の後に日英中韓4カ国語の字幕を用意して狂言「柿山伏」と能「小鍛冶」を上演したところ、留学生や観光客で満席となった。「4年後の東京五輪に向けて、外国人向けサービスを引き続き拡充させたい」と田部真弘・営業課長補佐は話す。

(雄)

[日本経済新聞夕刊2016年8月10日付]

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