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家計改善あの手この手

共用部分にも地震保険 集合住宅、負担抑えて加入

2016/8/3付 日本経済新聞 夕刊

 災害などで損害を被ったときに補償を受けられる火災保険や地震保険。分譲マンションの各住戸の「専有部分」に比べ、マンションの玄関ホールやエレベーターなど「共用部分」の関心は低い。個人でなく管理組合が加入するためだ。負担が少なくて済む保険のポイントをまとめた。

 「火災保険料を大幅に減らせた」。東京・渋谷にあるマンションの管理組合の理事長を務める赤松信子さん(68)は1月に加入した共用部分の火災保険料を減らせたことを喜ぶ。年間の保険料は約10万円。損害保険各社が昨年10月以降に火災保険を値上げしたこともあり、30万~70万円かかるとされていた事前の試算を大幅に下回った。

日新火災海上保険の「マンションドクター火災保険」は管理状況に応じて保険料を割り引く

 加入したのは日新火災海上保険が2015年7月に発売した「マンションドクター火災保険」。他社の火災保険の保険料はマンションの広さや補償内容で決まり、古いほど高くなる。一方、マンションドクターは一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連、東京・千代田)を窓口にして派遣されるマンション管理士が大規模修繕工事の実施状況や事故の履歴をもとに実際の管理状況を診断し、結果に応じて保険料を割り引く。日新火災商品開発部の山村直弘課長代理は「古いマンションが必ずしも事故発生の確率が高いとは限らない」と指摘する。

 赤松さんの住むマンションは築46年。ただ、事前にマンション管理士の助言をもとに給排水管や外壁などの改修工事を済ませ、長期修繕計画や管理規約を整備していたことから管理状況が最も高い評価で判定された。

 マンションの各住戸などの専有部分は通常、入居者が加入する火災保険が補償する。マンションの共用部分の損害を補償するのは、管理組合が加入する火災保険だ。名称は火災保険だが、落雷や爆発、風などの自然災害、外部から石など物が飛んできた際の破損・汚損など幅広い損害を補償する。最近では「総合保険」などとも呼ばれる。

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 マンション管理組合はほとんどが火災保険に加入しているとみられる。課題は保険料の引き上げだ。大手では三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険、損害保険ジャパン日本興亜が15年10月、東京海上日動火災保険が16年4月に保険料を引き上げた。値上げ幅は平均2割程度が多い。

 値上げの主な原因は老朽化による給排水管からの漏水事故の増加だ。給排水管は改修に費用や手間がかかり、メンテナンスが不十分な例が多い。

 一方、管理組合が保険料を多く支払うには居住者の負担を増やす必要があり、同意を得にくい。保険料の負担を増やさずに加入し続ける方法としては、契約内容の見直しが効果的だ。

 例えば受け取れる保険金の限度額。木造戸建て住宅に倣って評価額の60%に設定している例が多いが、マンションはコンクリート造りが主流で火災で全焼する可能性は低い。日管連の瀬下義浩副会長は「30%程度で十分なこともある」と指摘。また、契約時に設定する自己負担額である「免責金額」の引き上げで保険料が下がる例もある。

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 火災保険は幅広い損害に対応できるが、地震による損害は補償の対象外。地震への備えとなるのが地震保険への加入だ。火災保険とセットで加入できる。損害状況によって地震保険金の5、50、100%を受け取れる。

阪神大震災や東日本大震災では多くのマンションが被害にあった=一般社団法人日本損害保険協会提供

 ただし、マンション管理組合の地震保険への加入はまだ一般的ではない。一般社団法人日本損害保険協会(東京・千代田)の調べによると、火災保険の契約件数に対する地震保険の付帯件数の割合を示す「地震保険付帯率」は、マンション共用部分が13年度で37.4%と、戸建て・マンションの専有部分(75.3%)を大きく下回る。

 戸建て住宅よりも構造的に地震に強いと見なされているうえ、新築時の規約で地震保険が付帯されていないことも多く、追加負担に抵抗感がある。ただ、三井住友海上火災個人火災保険チームの藤田勇人主任は「東日本大震災の際、宮城県内のマンションで地震保険に加入していたケースの約9割は保険金を受け取っている」と指摘。築年数に関係なくほとんどが損害を受けたことになる。

 共用部分の地震保険加入を促すため、国土交通省は今年3月に管理組合の運営の基本指針のひな型である「マンション標準管理規約」を改正し、加入が想定される保険に地震保険を追加した。南海トラフ地震や首都圏直下型などの大規模地震の発生が予測されるなか、災害で損害を被ると管理組合の会計を圧迫しかねないだけに、加入を検討する余地はあるだろう。

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■保険料は上昇傾向
 地震保険料も上昇している。2017年1月に全国平均で5.1%引き上げられる。契約期間は最長5年なので、引き上げ前に長期契約する手もある。ただし、建物の構造などでは値下げする場合もある。代理店などと相談して決めるといい。

(マネー報道部 藤井良憲)

[日本経済新聞夕刊2016年8月3日付]

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